富士通グループのSI会社で、通信事業者向けシステム開発に強く、組み込みソフト開発も得意な富士通ビー・エス・シー(富士通BSC)の社長に室町義昭氏が就任した。富士通でのキャリアは多彩で、2年前に富士通BSCに移籍。満を持してトップに就いた氏は、「『モノづくりや技術に強い企業』から『ビジネスに強い企業』に変わらなければならない」と説く。
営業利益率を重視、目標は2ケタ超え
――2年前に富士通から富士通ビー・エス・シ―(富士通BSC)に移籍し、常務、専務を経て、社長に就かれた。満を持しての社長就任ですね。
室町 今年5月のゴールデンウィーク前に、兼子(孝夫・前社長)さんから要請を受けました。ご存じの通り、2年前に当社へ来まして、その時から構造改革を進めていますから、社長に就任した途端に、これまでとはまったく違う戦略を立てることはありません。
――社員には、どんなメッセージを伝えましたか。
室町 これも移籍直後に伝えた言葉と変わりません。「高視座・広視野」「相手の立場に立つ」「人材」の三つです。全体を見渡せるよう、高い位置から広い視点で物事をみること。顧客でも社内の上司・部下に接する時でも相手の立場に立って行動すること。そして最後が、SIerは人がすべてですから、各個人は自己研鑽を欠かさず、上司は部下を育てることを常に意識すること。私はこの三つをとても重要視していて、富士通に在籍している時から部下に徹底させています。
――富士通BSCはここ数年、年商はほぼ横ばいで停滞感があります。一方で、営業利益率は7.5%(2011年3月期)と、他のSIer・ソフト開発事業者に比べて高い。業績目標の指標を何に定めていますか。
室町 利益率にこだわります。社員数が増えましたし、新規事業に挑戦するためにもお金は必要ですから。営業利益率は、同業者に比べて高いかもしれませんが、2ケタはほしいな、と。利益を上げるためには、コスト削減や効率化だけでは限界がありますから、結果的に売り上げも増やしますが、利益を上げるための一つの手段と位置づけています。
――これまで進めてこられた構造改革と、現段階の状況について教えてください。
室町 まず、構造改革についてお話しします。社名の「BSC」って、最初は何の略称だったかご存じですか?今は「BROAD SOLUTION & CONSULTING」ですが、元は「Basic Software Corporation」。OSやミドルウェアの開発に強いことを社名に込めていました。要するに、基盤ソフトの開発を得意とするモノづくりの会社として立ち上がっています。
それだけに、品質に絶対の自信があるのですが、その一方で、営業といいますか、提案力が多少弱い部分があるのですね。富士通が提案して受注した開発プロジェクトを請け負う仕事も少なくないので、どうしてもユーザーへの直接提案の場が限られ、提案力が育ちにくい風土がありました。それを変えようと努力しています。技術力に加え、提案力もあわせもつ企業になろうと考えています。
――富士通BSCが独自に獲得するビジネスを増やしていこう、と。
室町 いや、必ずしもそうではありません。富士通経由か否かは関係ない。大事なのは、顧客の要望にそのまま応えるだけの仕事はしないこと。富士通経由の仕事でも、「顧客の状況はこうだから、こんなソリューションが受け入れられるだろう」といった提案を行うことができるかどうかが重要です。富士通と富士通BSCのスタッフでの定期的な情報交換会を設けて、その力を養っている最中です。
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