NECは2011年、パソコン事業で中国大手のレノボと連合することを発表し、IT業界に大きなインパクトを与えた。2012年は、「クラウド」と「エネルギー」のソリューション展開に注力し、BRICsをはじめとする海外事業の展開に拍車をかける方針だ。遠藤信博社長は、従来型ビジネスが縮小するなかで、「ビッグデータ」の分析・活用など、ITの新たな利活用による商機を探っている。同氏に2012年の事業戦略をうかがった。
BRICsでクラウド展開に注力
――2011年は、東日本大震災が発生し、さらにタイの洪水やヨーロッパの金融危機といった市場環境を不安定にする事象が相次いで発生しました。御社は事業面で、どのような影響を受けましたか。
遠藤 とくに欧州の金融危機は、思った以上に深刻な問題であるとみています。海外展開する日本のメーカーを悩ませている円高は、これまでは対ドルの円高が注目されていたのですが、今はそれに加えて、対ユーロの円高も日増しに大きな問題になりつつあります。経済界やIT業界のいろいろな人と話をして彼らの意見を聞くと、ヨーロッパの金融危機はそう簡単に乗り越えることはできないでしょう。少なくとも向こう3年間は、対ユーロの円高が続くとみています。当社の事業への影響についていえば、私どもはお客様のIT投資が回されるのがビジネス展開の前提となっていますが、お客様は不安定な市場環境のなかで、今、国内か海外か、どこに投資すればいいかがわからないというのが実情です。
――NECは2011年度の上期(4~9月)、ITサービスの事業が伸び悩みましたが……。
遠藤 当社ではITサービス展開の85%を国内が占めています。お客様は投資をする場所がわからなくて、投資を逡巡される。となれば、当然のこととして、ITサービス事業の業績に反映されることになります。さらに、東日本大震災の発生を大きな要因の一つとして、上期の後半から案件の決定が先送りになったケースがいくつかありました。しかし、IT投資が活発ではないとはいえ、リーマン・ショックによる景気の低迷からは回復しているとみています。
――国内の市場状況が厳しいなかで、御社は海外展開に力を入れておられます。
遠藤 ブラジル、ロシア、インド、中国の4か国で形成されるBRICs(ブリックス)を中心とした海外のIT市場は非常に懐が深い。12月上旬に、インドに行ってきました。インドはITに関してさまざまな可能性があると、現地で肌で感じました。インドだけでなく、BRICs全体は経済成長が著しく、インフラ系のIT需要が速いスピードで伸びています。当社が注力しているクラウドソリューションがBRICs諸国で有望な商材になると、自信を深めて帰ってきました。
――2012年の注力領域を教えてください。
遠藤 「クラウド」と「エネルギー」の二つです。クラウドは、BRICsでの展開を中心として、当社ビジネスの一つの機動力になると思います。また、国内においても、官公庁向けの公共案件を含めて、しっかりとクラウドのソリューションを展開していきたい。2012年は、国民IDなどをキーワードにして、クラウドの数多くの新たな商機が生じるとみています。
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