NECは、災害に強く、環境負荷の少ない情報システムづくりに全力で取り組む。「BCN Conference」特別講演の演台に立った岩波利光・副社長兼CMO(チーフマーケティングオフィサー)は、先の東日本大震災を踏まえて、「災害に強く、環境負荷の少ないビジネスや街づくりには、ITシステムの見直しが欠かせない」として、ITシステムをより積極的に活用していくことが安心・安全を取り戻すことにつながると訴えた。

<2011.10.14開催 BCN Conferenceレポート>

システム再構築の気運高まる

NECの岩波利光・副社長兼CMO
(チーフマーケティングオフィサー)
 NECは「BCN Conference」の特別講演で「人と地球にやさしい情報社会へ」をテーマに取り上げた。東日本大震災では、地震や津波による直接的な被害だけでなく、サプライチェーンの寸断や、原発事故に伴う電力供給不足問題によって社会全体が大きなダメージを受けている。NECでは、災害に強いITシステムを再構築し、万が一の場合でも早期の復旧・復興につなげることにより、日本の安心・安全の挽回に全力で取り組んでいく。

 災害に強いシステムづくりで、まず筆頭に挙げられるのがデータセンター(DC)を活用したクラウドコンピューティングの活用である。NECが運営するDCは、耐震性や耐災害能力が高く、ユーザー企業の電算室に設置するよりも「はるかに安全性が高い」(NECの岩波利光・副社長兼CMO)からだ。つまり、災害が発生しても、基幹系のシステムが迅速に復旧されれば、ネットワークや端末系の復旧は比較的容易であることを意味している。

 NECが運営するDCは、もともと省エネルギー性能の高い設備だが、規模のメリットによって省エネ性はさらに高まる。処理能力あたりの消費電力は格段に低い。さらに遠隔地のバックアップ用のDC設備を使うことで災害復旧(DR)への対応能力もすぐれている。従来のユーザー企業が個々に運営する方式では、平常時における省エネ面で限界があるだけでなく、災害が発生したときには事業継続計画(BCP)やDR(災害復旧)の面で、ユーザー企業は大きなリスクを背負ってしまうことになりかねない。NECでは、DCを基軸としながら、クラウドやシンクライアント、スマートデバイスを活用することで、利便性を高めながら、省エネで、かつBCPやコスト面でもメリットの多いITシステムへの移行を推進していく考えを示す。

 もう一つの重要な要素がある。ビジネスのグローバル化に伴い、企業が海外進出する機会が増えている。製造業や流通・サービス業など、とりわけ中国やASEANなどアジア新興国へ新たに進出するケースが多く、情報システムの面でのグローバル化が急務となっている。ここでも従来のローカル色の濃いクライアント/サーバー型に代わるシステムとして、グローバル対応力の高いクラウドに期待が高まっている。

 ユーザー企業のグローバル化、クラウド対応を支援するため、NECでは5極体制を構築。特に、クラウド市場が急速に拡大している中国では、香港、台湾を含めNECグループ現地法人43拠点が全面的にバックアップ。中でも、今年5月にクラウドサービスを提供する合弁会社を「東軟グループ」と設立し、豊富なサービスメニューを整備・提供するなど、クラウド導入への後押しを進めている。

ビジネスパートナーとともに

 販売面では、災害に強く省エネルギーなITシステムへの刷新、再構築をビジネスパートナーとともに進めていく。シンクライアントやスマートデバイスなどユーザー企業への物販やSI販売をビジネスパートナー経由で手がけるとともに、NEC販売店が独自にDCを運営してクラウドをはじめとするサービスビジネスを展開するケースも積極的に支援していく。「販売店やSIerの物販ビジネスからサービスビジネスに至るまで、トータルで支援していく」(岩波副社長)と、ビジネスパートナーを重視するNECらしい施策を打つ。パートナーがNECのDCを活用して、サービスビジネスを展開することも可能だ。

 SIや販売に加えて、クラウド技術やDCを活用したサービスビジネスを伸ばすことは、災害や省エネ対策にも有効である。

 DCとシンクライアント、スマートデバイスの組み合わせは、先の東日本大震災でも有効性が確認されており、BCPやDRへの重要性が再認識されている今、ビジネスパートナーにとっても、この領域が大きなビジネスチャンスになっていることは間違いない。地域に密着したビジネスを展開することの多いビジネスパートナーは、ユーザー企業にとって最も頼れる存在であるとともに、こうしたユーザーの期待に応えることでビジネスをさらに伸ばすことが可能になる。

 例えば、シンクライアントによる在宅勤務支援や、サテライトオフィスでの業務、遠隔会議システムなどを平常時から提案しておけば、万が一の場合にBCP能力が格段に高まる。交通機関の乱れは人の移動を著しく阻害するので、自宅や郊外のサテライトオフィス、またこれらを無線や有線などさまざまな通信回線でつないでの遠隔会議システムは、平常時だけでなく災害時にも役立つ。

 NECでは、「人と地球にやさしい情報社会」を実現するためのイノベーションにも積極的に取り組んでいる。エネルギーを効率的に活用するEMS(エネルギー管理システム)や、高度道路交通システム(ITS)、地域医療情報ネットワーク、新しいビジネス・ライフスタイルの創出などの分野を重点項目に挙げる。例えば、エネルギーの効率活用では、情報ネットワークをフルに駆使した電力配分の最適化、ならびにキーコンポーネントとなる蓄電池の開発に力を入れる。蓄電池では、従来比2倍余りに寿命を延ばしたマンガン系リチウムイオン電池技術を独自に開発。家庭や電力系統向けの蓄電池での応用を進める。

 EMSやITS、地域医療、ビジネス・ライフスタイルのいずれも「潜在的な市場規模が大きく、息の長いビジネス」(岩波副社長)であり、NECではイノベーションでリードするとともに、全国のビジネスパートナーとともに、人と地球にやさしい情報社会の実現に向けて邁進していく。