ITホールディングスグループのTISは、中核事業会社の一社としてグループの成長エンジンの役割を果たす。旧TISと旧ソラン、旧ユーフィットの3社合併から約1年。組織や調達の統合、事業所の再編などに前倒しで取り組んできた。2012年4月からの新中期経営計画では「顧客のビジネスの成長にコミットする」(桑野徹社長)と、新生TISとしての目標を改めて掲げる。グローバルビジネスでは、ユーザーがこの地球上のどこでビジネスを行っても、国内にいるのと同様の均質なITサービスを享受できるように、体制の強化を目指す。
世界をカバーするサービス体制
──首都圏の電気料金が4月から大幅に値上げになることがアナウンスされるなど、震災と原発事故の影響が新年度以降も尾を引く懸念があります。データセンター(DC)ビジネスにマイナスにはなりませんか。
桑野 確かに当社は首都圏に3か所、大阪に2か所、名古屋に2か所、海外では中国・天津に1か所と、大型DCを多数運営しています。このうち首都圏のDCについては、電気料金の値上げの影響が避けられそうにありません。ただし、DCは電気を仕入れて、そのまま売るビジネスではない。設備を運用・管理し、情報を処理することが価値の源泉であり、DCを活用して顧客企業の情報システムを総合的に請け負っているわけです。こうしたアウトソーシングやサービスビジネス全般の付加価値をより高めていけば、原価に占める電気料金の構成比は相対的に低くなります。
とはいえ、東京電力が想定しているモデルケースを見ると、特別高圧の契約で18.1%、高圧でも13.4%の値上げ率となっており、仮にこれが実施されるとなると、一部の顧客とは利用料金を相談しなければならない局面が出てくるかもしれません。
──電気料金の値上げは、国内産業の海外移転がより加速されることにつながらないでしょうか。
桑野 東電管内であれば、電気料金の値上げの影響はほぼすべての事業者に影響するわけで、特定の企業が損をするたぐいのものではない気がします。それに、アジア成長国をはじめとするグローバル市場への進出は中長期的なトレンドとして捉えるべきで、たとえ電気料金が据え置かれたとしてもこの流れは大きく変わらないでしょう。当社もアジア最大市場である中国の多拠点化を推し進めるとともに、今年1月にはシンガポールに現地法人を設立しました。すなわち、ASEAN地域での情報サービスビジネスを立ち上げたということです。
──御社は日系主要SIerで最も早い時期に自前のDCを中国で開設していますが、ビジネスの進捗はどのような状況ですか。
桑野 天津DCは、2010年4月の全面開業から丸2年が経とうとしています。サーバーラック換算で約1200ラックと相当大きな規模ですが、受注は堅調に推移しています。当社グループが強みとしている金融分野でのアウトソーシング案件だけでなく、中国で需要が急拡大しているクラウドやネットサービス系の受注拡大も視野に入れています。当社の後を追うようにライバルである日系大手SIerやITベンダーが中国でのDC事業を相次いで拡充していますが、天津DCの2年のアドバンテージは大きい。現地で実際にやってみないとわからないことが山ほどあり、このノウハウは今後、中国をはじめとする海外ビジネスを拡大するうえで必ず生きてきます。
かつては主に邦銀顧客の対応でニューヨークやロンドンといった金融都市にオフィスを構えていましたが、私個人としてはもう一度、アジアから世界へビジネスを広げたい。顧客企業からは「中国やASEANのサポートだけでなく、米州や欧州でもお願いしたい」という声が多く聞かれます。最終的には、ユーザーがこの地球上どこでビジネスを行っても、国内にいるのと同様の均質な当社サービスを利用できるよう、サービス体制を強化していきます。
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