成長エンジンの役割を果たす
──2011年4月、旧TISと旧ソラン、旧ユーフィットの3社が合併した後、御社は特別転身支援プログラムを実施しておられます。この意味を聞かせてください。
桑野 特別転身プログラムで退職したのは514人。私の出身会社である旧TISの歴史上、初めてのことです。先に述べたように、サービス化、グローバル化を推し進めていくなかで、どうしても会社の進む方向性とずれがでてきてしまう人が現れることは避けようがない。例えば、長らく続けてきた手組みの受託ソフト開発の規模縮小は、情報サービス業界全体の抗いがたい潮流で、グローバルやサービスビジネスへの対応力もより強く求められています。
今策定している来年度(2013年3月期)から始まる新中期経営計画では、古いタイプのビジネスは縮小し、クラウドやグローバルといった新しいビジネスはより大きく伸ばすといったマーケットイン方式を基本にしています。「そんなの、あたりまえじゃないか」とのご指摘をいただきそうですが、恥ずかしながら、これまでは本社企画部門が市況を踏まえ、例えば「あなたの部門は何人月の仕事をしてるから、予算はこのくらい」と決めていた節がありました。だから総じてすべての事業部門で前年比プラスの予算組みで、ゼロベースとかマイナスの予算など組んだことがありません。今は、ある部門の予算が減る一方、別の部門は売り上げ倍増の計画を立てることもあり得る。市場の変化適応力を高めるためにも、メリハリがある柔軟な経営計画で臨みます。
──3社合併からほぼ1年。規模の拡大によって、どんな成果を得ることができましたか。
桑野 合併によって、ITホールディングス(ITHD)グループの中核事業会社としての存在感が高まりました。ITHDグループは、当社とインテックの二大事業会社を中心にそれぞれ専門特化した事業会社で構成しています。インテックとはITHDグループとしてあらゆる面で連携を密にしているのはいうまでもありません。ただ、その一方で、私の意識のなかには「ITHDグループを引っ張っていくのはTISである」という気概もあります。わが社が事業を伸ばせば、それだけインテックや他の事業会社との相乗効果も高まりますし、連携もより一層深まるというものです。
このために3社合併の組織や調達の統合、事業所の再編を急ピッチで進めてきました。昨年10月には事業部系の組織を半年前倒しで原則統合しましたし、生産財などの調達の一本化も順次前倒しで取り組んできました。東京や名古屋地区の事業所再編も予定より3か月ほど早く実施するなど、とにかく振り返る余裕もないほどスピードを上げています。
──今年4月から新中期経営計画が始まりますが、どのような目標をイメージしていますか。
桑野 中期計画は現在策定中ですので、まだ数字は公表できませんが、少なくとも顧客のビジネスの成長に深くコミットする新生TISになることをより明確に打ち出していきます。
・お気に入りのビジネスツール ドイツのラミー社製のボールペン。今愛用しているのは三代目で、ラミーのユーザー歴は30年近い。
「昔は手書きすることが多く、ラミーの太くて丸いデザインが指によく馴染んで疲れにくい」ことが、長年、愛用している理由だとか。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「情報サービス業は2~3年先を見越して手を打たなければ勝てない」──。桑野徹社長は“先手必勝”を胆に銘じている。目まぐるしく変化するITアーキテクチャに対応できる開発人員のスキル転換はもとより、計画から開業まで少なくとも2~3年はかかるDCでも将来の見極めが勝敗を分ける。
2011年4月、東京都内で開業した御殿山DCは、2008年のリーマン・ショックに直面しても計画の見直しや凍結をしなかった。天津の大型DCは、主要SIerのなかで最も早く中国で開業したDCである。
今年、ライバルの大手SIerが都内に大型DCを相次いで開業するが、「他社よりも1年早く御殿山DCを開業して、震災直後のBCP(事業継続計画)や節電のニーズを取り込んだ。天津DCは2年のアドバンテージがある」と胸を張る。この4月から始まる新中期経営計画では、3年後、今と同様の勝ちを引き出す“先手”を打てるかどうが試されている。(寶)
プロフィール
桑野 徹
桑野 徹(くわの とおる)
1952年、大阪府生まれ。76年、大阪大学基礎工学部物性物理工学科卒業。同年、東洋情報システム(現TIS)入社。00年、取締役産業第1事業部副事業部長。04年、常務取締役プロジェクト推進室担当。08年、専務取締役金融・カード事業統括本部長兼カード第1事業部長。10年、代表取締役副社長金融事業統括本部長。11年4月1日、代表取締役社長就任。
会社紹介
情報サービス業界トップグループの一角を占めるITホールディングスの今年度(2012年3月期)連結売上高は前年度比0.6%増の3250億円、営業利益は同9.2%増の140億円の見通し。直近のグループ会社数は58社(2011年4月1日現在)で、TISとインテックが中核事業会社となる。データセンターを活用したビジネスを得意とし、中国やASEANなど成長国市場にも積極的に進出している。