関電でスマートシティのチームを組む
──このところ、ICT(情報通信技術)を活用して都市のインフラ改善を図る「スマートシティ」が注目を集めています。とくに、東日本大震災による電力供給事情の悪化を受け、ICTを生かしてエネルギーをより効率的に使うことが課題になっていると思います。関電グループの有力SIerである御社としての、「スマートシティ」の事業展開に関する見解を聞かせてください。
田村 スマートシティには非常に大きな可能性を感じます。今、東北の被災地域で少しずつスマートシティ化が進んでいます。エコに取り組む地方自治体が増えるなど、スマートシティの普及に必要な市場環境が目にみえるかたちでできあがりつつある。当社は、SIerでありながら、スマートシティの実現に欠かせない電力会社のノウハウをもっているという有利な立場にいるので、スマートなエネルギーソリューションの提供をどんどん推進していきたい。
関電本体は、スマートシティを「取り組むべきテーマ」と捉えていて、当社もメンバーの一員となる横断的なチームを編成する動きがあります。チームでは事業計画を立案して、市場環境の動きをみながら、計画を実現するタイムスケジュールを検討します。
スマートシティの事業展開にあたって、一つのモデルとして考えられるのは、「家庭」と「電力」との連携です。シャープやパナソニックなど家電メーカーは、電力使用を可視化する「スマート家庭」の製品開発を進めていて、「スマート家庭」で情報を処理するためにSIerのノウハウを必要としています。当社は、メーカーやゼネコンとの連携も考慮し、SIと電力の両方に精通する独特な立場を生かして、スマートシティの事業化に取り組んでいきます。
──御社は、外販の強化を方針に掲げて、関西地区のユーザー企業を主な取引先としておられます。今後は関西地区以外、例えば、アジアを舞台にしてビジネスを展開することも考慮していますか。
田村 外販のお客様は、9割が関西地区で、1割が首都圏という構成になっています。最近は東京での開発案件が増えていることもあって、首都圏のビジネスを強化していきたいと思っています。一方、大部分を占める関西地区のお客様は、アジア進出に拍車がかかっていて、そうしたお客様にシステムを提供する当社も当然ながら海外へついて行くことになります。その意味で、「外販の強化」はイコール「アジアでの事業展開」になるといえるでしょう。
また、スマートシティ関連の展開に関しても、アジアは無視できない有望な市場です。スマートシティ化が活発に進んでいる中国やインドでは、スマートメーター(通信機能をもつ電力メーター)と連動して、データを分析・活用するITソリューションの需要が大きく高まっています。当社はその市場をいち早く開拓することを目指して、数年前から、社内の優秀な社員をインドに派遣する研修プログラムを実施しています。このように、日本とインドのシステムエンジニアの間で開発ノウハウを共有し、当社の海外事業の基盤づくりを積極的に推し進めているところです。
・お気に入りのビジネスツール 携帯できるサイズの家族写真。キャッシュカード程度の大きさで、財布に入れている。「海外の取引先と食事をするときに家族の写真を見せると、話が弾んで、商談が進めやすくなる」と、この特別な“ビジネスツール”の活用法を紹介してくれた。
眼光紙背 ~取材を終えて~
田村社長は、常に日英・英日の電子辞書を鞄に入れて持ち歩いている。グローバルを基準にして、ビジネス活動を行っているそうだ。
「第3データセンター」を新設するにあたって、米国でIBMのデータセンター(DC)を見学し、エネルギーを効率的に使う空調システムを取り入れるなど、「世界クラスの設備を目指した」という。省電力化を実現する設備は、DC事業者にとって強力な武器となる。韓国など日本の周辺国で価格の安いDCが増えているなかで、省電力化によってサービス料金を安価にすることは、価格競争で勝つために不可欠だからだ。
田村社長は、DCの需要が旺盛な状況にあって、早いうちに第4のDCを建てることに意欲を示している。「第3データセンター」は2013年から売り上げに貢献するとみており、金額として「年間で10億~20億円程度を期待している」という。この勢いでDCをさらに増やし、売り上げを伸ばす。(独)
プロフィール
田村 和豊
田村 和豊(たむら かずとよ)
1948年2月19日、香川県生まれ。72年、京都大学大学院修士課程(電気工学専攻)を修了後、関西電力に入社。同社で電力システム室の系統運用部長などを経て、2006年、関電システムソリューションズの常務取締役ソリューション事業本部長兼経営改革推進本部長に就任。10年6月に代表取締役社長に就き、現在に至る。
会社紹介
関西電力の出資100%の子会社。1967年、関西総合電子計算センターとして設立され、2004年、ICT(情報通信技術)ベンダーの関西テレコムテクノロジーとの合併によって、現社名の関電システムソリューションズに。データセンター(DC)サービスから上流コンサルティングまでの事業を手がける。2010年度(2011年3月期)の売上高は345億円。そのうち、関西電力/関西電力グループ向けビジネスが313億円、グループ外向けが32億円を占めている。