他社との協業で「垂直型サービス」を提供
──成長戦略についておたずねします。NECフィールディングが得意な保守サービスは、ハードのオープン化と低価格化によって市場規模が縮小し、今後もその傾向が続くことは必至です。その影響で、NECフィールディングのビジネスも厳しい状況にあります。再び成長するシナリオとはどんなものなのでしょうか。 伊藤 実は、保守サービスの低迷は織り込み済みで、数年前から保守サービス以外のビジネスを強化しています。ITインフラの設計・構築と運用もカバーするビジネス基盤を築こうと考えています。情報システムの上流から下流までワンストップで提供するのです。キーワードは「垂直型サービスモデル」です。
──理想の姿だとは思いますが、実現するには、現在のNECフィールディングにはない新たな組織が必要という気がします。 伊藤 自分たちで何もかもこなそうとは思っていません。私たちが強い領域は自前で提供し、手薄な分野は最適なパートナーを見つけて任せる。こうしたエコシステム(協業体制)の構築が有効だと思っています。
──手薄な分野を補うために、M&Aをかける考えはありますか。 伊藤 う~ん、言いたいことはありますけど、この場では控えておきます(笑)。
──では、手薄な分野はどこですか? これくらいは答えていただけますね(笑)。 伊藤 アプリケーションの開発・運用とネットワークの構築は弱いと思っています。
──合併とはいわないまでも、NECグループで協業を強めなければいけないと考えている企業は? 伊藤 NECネクサソリューションズとNECネッツエスアイでしょうね。
DCを増床・新設する可能性は十分にある
──NECフィールディングは再成長に向けて四つのキーワードを掲げています。一つは、先ほどの垂直型サービスモデル。ほかの三つは「海外事業の本格立ち上げ」「クラウドサービスの強化」「SMB(中堅・中小企業)向け事業の拡大」とうかがっています。これらを軸にする方針に変わりはありませんか。 伊藤 この四つがポイントだと確信していますので、変えるつもりはまったくありません。
──では、具体的にどんな動きを展開していくつもりですか。 伊藤 売り上げを伸ばすためには、海外事業は必須。当社は海外の売上高が少なく、海外事業の経験者も多くない。これからが本番で、私が直接口を出して動かしていきます。NECディスプレイソリューションズは海外に強かったので、そこで得たノウハウを生かします。メーカーの保守サービス会社が力を発揮するのは、付加価値の高い製品向けであって、サーバーのようなコモディティ化した製品に対しては私たちが直接やる必要はないかもしれません。海外の市場では、中身が複雑で高度な知識が求められる製品の保守サービスに力を入れるつもりです。
──海外はどこを中心に攻めて、どのくらいの売り上げを目指しますか。 伊藤 まずは100億円で、相手はアジアと北米でしょうね。
──クラウドとSMBについてはいかがですか。 伊藤 NECグループとして、SMB市場ではライバルに負け続けていますからね。全国に多くの拠点があり、ユーザーとの距離が近い私たちが、巻き返す役割を担えればと思っています。NECの支社・支店、販売店と協力して、とくに地方のSMBに対してITサービスの提供を強化します。そのなかでも好調なのが、データセンター(DC)を活用したクラウド。2010年に中部地方に、今年の4月には北海道に、DCをNECと共同設置して地方のSMB向けにクラウドを提案していて、順調です。クラウドに対するニーズは地方のSMBにも強くあることを実感していますので、今後、DCを増床・新設する可能性は十分あります。
──クラウドが普及して、ユーザーがシステムを保有しなくなれば、保守サービスの拠点や人員が不要になるのでは? 伊藤 拠点や人員が不用になるほどまでには、クラウドは普及していません。ただ、かなり注意して観察を続けるポイントだと認識しています。少なくとも、今後国内の事業で、拠点を増やすという選択肢はないでしょうね。
──来年度は中期経営計画をスタートするとうかがっています。 伊藤 はい、3か年計画を始めます。今年後半から具体的なアクションプランを立てていきます。NECディスプレイソリューションズでは、NECとの連携がそれほど必要なかったので、けっこう好き勝手にやっていたのですが(笑)、NECフィールディングはNECとの協業が重要なので、足並みを揃えて計画をつくっていきます。
・FAVORITE TOOL 最近使うビジネスバッグは、決まってTUMIとか。普段持ち歩くものと国内出張用で使い分けているが、いずれもTUMIブランドのバッグを利用している。「頑丈でポケットがたくさんあって便利」なところがお気に入りのポイント。今使っているバッグ(写真)は、4~5年前からの愛用品という。
眼光紙背 ~取材を終えて~
主要なコンピュータメーカーには、必ず保守サービスを提供する子会社がある。NECはNECフィールディング、富士通は富士通エフサス、日立は日立システムズ、東芝は東芝ITサービスがそれにあたる。富士通エフサスは、2004年に上場を廃止して、富士通の完全子会社になり、日立システムズはもともと保守サービスの日立電子サービスと、SIの日立情報システムが統合して生まれた。東芝ITサービスも、いくつかの東芝グループ企業を取り込んできた。再編の大きな波のなかで、体制を変えてきたわけだ。唯一、NECフィールディングは似た業態の企業のなかで上場を維持して、大型合併も経験していない。NECフィールディングが垂直統合型サービスモデルを提供するITベンダーに生まれ変わるためには、弱点を補うためにM&A(吸収合併)をかけるべきではないのか。
NECフィールディングの社長に取材するのは、伊藤社長で5人目。記者が投げかけたM&Aに関する推測を過去の社長の何人かは否定していない。伊藤社長はどう舵を切るのだろうか。(鈎)
プロフィール
伊藤 行雄
伊藤 行雄(いとう ゆきお)
1952年6月、山梨県生まれ。1975年3月に東北大学工学部通信工学科を卒業後、NECに入社。06年、執行役員兼第二コンピュータ事業本部長。08年、執行役員常務兼第二コンピュータ事業本部長。10年、映像表示装置の開発・製造・販売を手がけるNECディスプレイソリューションズの社長に就任。12年4月にNECフィールディングに移って顧問を務めた後、同年6月、代表取締役執行役員社長に就任した。
会社紹介
NECグループで、主に情報システムの保守・運用サービスを展開する。連結従業員は6170人で、国内444か所(連結)に営業・サービス拠点を設置する。ハードの保守サービス事業がメインだったが、最近では運用サービス、クラウドビジネスに力を入れる。2002年に、東京証券取引所第一部に上場。昨年度の業績は、売上高が前年度比2.8%減の1837億2000万円、最終利益が14.8%減の40億2100万円。