2012年度上期の大幅なコスト削減によって営業利益の改善を果たしたものの、業績が本筋で回復したとはいえないNEC。そんな状況にあって、遠藤信博社長は、2013年4月をめどに、新しい成長戦略を定める3か年計画を策定することを明らかにしている。2013~15年度の3年間を「NECの次の100年に向けた基盤を築くための期間」と捉えて、「現在のビジネスのあり方に区切りをつける」と断言する。遠藤社長に、2013年の事業方針についてたずねた。
新政権による経済活性化に期待
──12月16日、このインタビューの2日前に、衆議院議員総選挙が行われ、政権交代が決まりました。政治面では日本は大きな転換期を迎えるわけですが、経済人として、遠藤社長は2013年にどのような期待を寄せておられますか。 遠藤 新しい年に最も期待しているのは、国の成長戦略に関しても、情報サービス産業の動向や当社のビジネスに関しても、明確な「方向感」が出てくるということです。
新政府には、わが国の中・長期の成長戦略をはっきりと決めることを、ぜひお願いしたい。そして、成長戦略を基軸にするかたちで、福祉や税金など、個々の分野のあり方を決めてもらいたいと思います。今回の政権交代をきっかけとして、2013年以降、日本の経済が活性化することに強い期待感をもっています。
2012年の当社の動きを振り返れば、私どもの注力分野である「エネルギー」では、すでに方向感が出始めていると実感しています。
例えば、2012年10月に、イタリアの大手電力会社ENEL SpAの関連会社であるENEL Distribuzioneから、次世代スマートグリッドに向けた実証実験用のリチウムイオン蓄電システムを受注しました。グローバルで、エネルギーソリューションの案件が動いています。これをベースに、2013年はエネルギー分野にもう少し踏み込み、事業を伸ばしたいと考えています。
──御社は2012年度の上期(4~9月)に、売上高が0.3%と微増しました。遠藤社長には、「ラッキーな部分もあって、若干の伸びを実現した」とうかがっています。そうしたなかで、2013年の国内IT投資の動向をどうみておられますか。引き続き厳しいでしょうか。 遠藤 いや、必ずしも厳しいというわけではないと思います。
もちろん、各種調査会社の予測をみると、国内の情報サービス産業の大きな伸びは見込まれていません。しかし、そんな状況にあって、お客様がITの活用によってどれほど新たな価値を生み出し、ビジネスを拡大するかが、私ども提案する側にとっての重要なポイントです。つまり、ベンダーとして、IT投資によって事業を伸ばすことができるソリューションの提案を強化すれば、ユーザー企業もIT投資に対する考え方を見直し、プロフィットを目指して戦略的にIT活用に資金を投じるようになる可能性が高くなります。そう考えると、国内IT市場が予測以上に伸びることは十分にあり得ると確信しています。
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