東芝ソリューション(TSOL)グループの東芝情報システムは、組み込みソフト開発とシステム構築(SI)、LSI、医療・介護の四つの注力分野でビジネスを伸ばす。苦戦が続いた組み込みとLSIだが、前者はスマートデバイスとホームエネルギー管理システム(HEMS)の連携や、自動車用の制御ユニット(ECU)領域などで発展させ、後者は製造中止になったLSIの再生サービスなどを足がかりとして、再び拡大基調への転換を図る。基幹系バックエンドシステム開発の強みを織り交ぜながら、TSOLグループ最大のSIerとしての存在感を一段と高めていく。
自動車やHEMS、医療などに活路を見出す
──組み込みソフト事業の立て直しに向けて、どのように取り組みますか。 恩地 当社は組み込みソフトやLSI(大規模集積回路)設計を強みとしているのですが、残念ながら組み込みソフト市場全体の変化やリーマン・ショックをきっかけとしたLSI需要の低迷で、この事業領域が伸び悩むことになりました。

そこで再生に向けて、自動車用の制御ユニット(ECU)や、ホームオートメーション(HA)、ホームエネルギー管理システム(HEMS)、情報通信、音響・映像(AV)などの連携分野でのビジネス拡大に取り組みます。
──従来型携帯電話とカーオーディオなどの車載機器、デジタルテレビをはじめとする情報家電が“三種の神器”といわれていた日本の組み込みソフトですが、いずれも市場規模が大幅に縮小してしまいました。 恩地 ご指摘の通り、AndroidとiOSの時代になってからは、アプリケーション開発が中心になりましたし、いわゆる車載機器や情報家電系の仕事の内容も大きく変わりました。アプリ開発は組み込み技術を十分に生かせないので、当社の強みを出しにくい。だからこそ車載系は組み込み技術を生かしやすいECUをメインとし、情報家電系の分野においてもスマートデバイスなど通信機器と家電、HA、HEMSなどとの相互接続をメインにすることで優位性を確保する考えです。
具体的には、スマートデバイスとクラウド、家電、家庭用の電気設備などを有機的に結びつけて、省エネで使い勝手のいいサービスを実現していきます。医療・介護分野でいえば在宅医療や遠隔医療、訪問介護サービスなどにも応用できるでしょう。当社がサービスベンダーになるというよりは、こうした家庭向けや医療・介護分野でサービスを提供している事業者向けに組み込みソフト技術を駆使した高度なソフト開発を行う。先述の自動車ECUについては、有力な周辺機器メーカーなどに向けに営業を強化していきます。
──組み込みや医療・介護分野でのソフト開発を注力事業にしていくということですか。 恩地 そうですね。当社は年商450億円規模のSIerですので、経営リソース的に何もかも全方位でというわけにはいきません。まずは強みの組み込みソフト、医療・介護、システム構築(SI)、LSIの四つの分野を重点的に伸ばしていく考えです。直近の売上構成比では、組み込みソフト開発が約40%、SIが約35%、LSIが約15%、医療・介護が約10%で、組み込みソフトとSIが大きな比重を占めます。医療・介護分野のビジネス比率はまだ小さいですが、2012年4月にヘルスケア事業統括部を新設。早い段階で“事業部”に格上げできるようビジネスを伸ばしていきます。
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