売り上げダウン、底を打って一転、伸長へ
──御社は確かピーク時に年商600億円ほどあったという記憶がありますが……。 恩地 組み込みソフトやLSIなどの不振で、150億円ほど落ち込んだのは事実ですが、2012年3月期が底だったとみています。組み込みソフトで前述の新しい領域へと踏み出していることもあり、今年度(2013年3月期)以降、再び売り上げを伸ばしていけるとの手応えを感じています。
──御社は東芝グループで唯一のITソリューション専門に手がける東芝ソリューション(TSOL)グループのなかで、ソフト開発会社としては最大規模ですから、御社の業績はTSOLグループ全体への影響も大きいと思われます。 恩地 二つの見方があると思いますが、まずTSOLグループの売り上げへの貢献という側面では、当社によるグループ外の一般顧客に向けたビジネスを伸ばすこと。二つ目は利益への貢献度を高めるためにSE子会社として内製化率を高めるとともに、コスト削減のためにオフショアソフト開発の比率を増やすことなどが挙げられます。
外販は後で述べるとして、まずはSE子会社としての役割ですが、オフショア開発の規模拡大がここ数年、思うように進まなかった点は、反省すべきです。
売り上げそのものが下がったためにオフショアに出せるボリュームが減ったことや、オフショア開発先とのコミュニケーション不足など、やや内向きになってしまったのは否めません。
──直近でのオフショア開発の状況はいかがでしょうか。 恩地 私が社長に就いた2011年頃から再び拡大傾向に転じていて、オフショア開発先も中国だけではなく、ベトナムで発注先を開拓することにも取り組むようになっています。円安基調の動きもみられますし、中国のインフレや人件費の高騰を受けて、従来のままの中国でのオフショア開発は厳しくなりつつある。これを打開するため、中国の地場SIerとの協力関係のあり方を見直したり、ベトナムをはじめとする低コストで開発できる地域への進出に積極的に取り組んでいきます。
ただ、オフショア開発は“規模のメリット”が幅を利かすこともあって、まとまった開発ボリュームを安定的に発注できなければ、十分な価格交渉力を保つことができません。TSOLグループ全体で一丸となった発注体制を整備するとともに、なにはともあれグループ全体の売り上げを伸ばさなければ、オフショア開発のボリュームは増えないままです。SE子会社としてソフト開発体制の整備をリードするとともに、TSOLグループ最大のSIerとして外販にも力を入れます。
TSOLグループ最大SIerの存在感を高める
──売り上げを伸ばすための外販ビジネスで、LSIや医療・介護の取り組みを教えてください。 恩地 LSIについては、「ディスコンLSI再生サービス」がヒット商材に育ちつつあります。ディスコン(製造中止)になったLSIを、再度、つくり直すもので、すでに生産ラインが閉じているLSIの回路を分析し、比較的リーズナブルな価格で再生産するサービスです。ニッチではあるのですが、既存のLSIを再利用するときに便利で、電機メーカーなどから重宝がられています。こうした気が利くサービスを増やしていくことでLSI事業も、組み込みソフト同様、再び伸ばせると踏んでいます。
医療・介護についてですが、当社はSIerとして中堅・中小の病院や地域医療連携ネットワークシステム、在宅医療・介護など幅広くビジネスを広げていくことを考えています。レントゲンやCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(核磁気共鳴画像法)、超音波診断といった医用機器システム、あるいは電子カルテやPACS(医用画像情報システム)をはじめとする医療情報システムは、東芝メディカルシステムズの担当分野で、ここと連携をするのは当然として、当社独自の強みも打ち出していきたい。
──売り上げの回復目標はいかがでしょうか。 恩地 早期に600億円水準に戻したいのはやまやまですが、まずは500億円を目指します。組み込みや医療・介護など要素技術をもつ会社はほかにもありますが、当社はバックエンドに相当するクラウドや基幹業務システムに強い。TSOLグループでは2012年に数百ラック規模の東京第2データセンター(DC)スペースを確保したのに続き、2013年度下期をめどに神奈川県にもDCを開設する予定です。DCで役立つ東芝の超高速フラッシュアレイストレージなども活用しながら、フロントエンドからバックエンドまでトータルで強みを発揮していきたい。
グローバルビジネスについては、中国大手SIerの東軟集団(Neusoftグループ)と密接な協業関係にあるとともに、東軟集団は医療・介護分野に精力的に取り組んでいることから、医療・介護分野で協業の余地は大きいとみています。また、成長市場であるASEAN市場についてもTSOLグループ全体として足場を固めていくことで、ビジネスを伸ばしていく方針です。
・FAVORITE TOOL 銀色のペンは1978年、東芝入社時に買ったゼブラの「シャーボ」。シャープペンシルとボールペンを組み合わせた当時の人気商品だ。金色はクロス、チェック柄はモンブラン。ほかにもパイロットやパーカーのペンも愛用中で、「歴代の思い出深いペンが私の宝物」だそうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
東芝ソリューション常務を務めていた恩地和明氏が2011年6月、東芝情報システムの社長に就いたときに抱いた印象は、「社内に少し元気が足りない」というものだった。東芝情報システムは、「東芝グループのなかでも反骨精神が旺盛で、一時は株式上場も視野に入れていた」と聞いていたが、外から見ていた時代の姿と、角が取れて丸くなった実際の姿にギャップを感じたというのだ。組み込みソフトやLSI設計などの不振で売上高がピーク時から150億円ほどダウンし、徒労感すらにじんでいた。
恩地社長がトップに就いた翌年の8月、創立50周年を迎える。このとき、最盛期の東芝情報システムがもっていた「反骨精神」を甦らせるために「TJスピリット」のスローガンを策定した。TJとは東芝情報の頭文字だ。挑戦や品質、成長、仕事をやり遂げるなどの目標に続いて、「語り合う、認め合う、一人ひとりがTJ」と“TJ魂”を社員やスタッフ全員の共通語に位置づける。反骨精神旺盛なTJを取り戻し、再びビジネスを軌道に乗せようとしている。(寶)
プロフィール
恩地 和明
恩地 和明(おんち かずあき)
1954年、福岡県生まれ。78年、鹿児島大学工学部電気工学科卒業。同年、東京芝浦電気(現東芝)入社。97年、東京システムセンター応用システム部長。03年、東芝ソリューション ソリューション第一事業部システム構築統括部長。05年、取締役システム構築統括責任者。08年、常務取締役システム品質統括責任者。11年6月、東芝情報システム社長に就任。
会社紹介
東芝情報システムは、東芝ソリューション(TSOL)グループ最大のSI子会社で、ソフト開発などSE子会社の役割も担う。2012年3月期のTSOLグループ全体の売上高は約2250億円で、うち東芝情報システムは約450億円を占める。主力とするSI力に加えて、組み込みソフトやLSI設計、医療・介護分野など東芝情報システムならではの強みを生かしてビジネスを伸ばす。