大阪ガスグループの有力SIerオージス総研は、技術重視の経営によって競争力を高める。アジャイル開発やOSS(オープンソースソフト)、クラウド基盤をはじめとする先端技術を徹底的に磨く。システム構築(SI)の現場では、付加価値の高い設計など上流工程を指向する傾向が強まっているが、ソフトウェアのソースコードレベルまで深く理解する技術力を重視。システムのブラックボックス化を未然に防ぐことで、100年使い続けられるシステム「100年アーキテクチャ」を目指す。
ITの特性は場所の制約をなくすことだ
──御社は大阪屈指のユーザー系SIerですが、関西地区の情報サービス業の景況はいかがですか。 平山 当社は大阪ガスグループのSIerではあるものの、実はグループ外に向けた売り上げのうち、関西地区が占めるのは10%程度なんですよ。主な受注先はやはり首都圏です。地元の情報サービス業のおおよその景況感についていえば、2012年から徐々に回復基調にはありますが、やはり主戦場は首都圏ということになります。
──大阪ガスは関西地区のユーザーから大きな信頼を得ているインフラ企業ですので、こうしたブランドを生かして、もっと地場市場の開拓を進めることも一つの方法ではないでしょうか。 平山 地場市場を軽視しているわけでは決してありません。関西地区のユーザーの発注部門が首都圏へ移ったり、本社機能が移ることも相次ぎましたので、これは仕方ないことだと思っています。ただ、これからの情報サービス業の大きな流れを考えた場合、逆に地域差はどんどん縮まっていく傾向にあると考えています。
首都圏で受注したものを大阪で開発する、あるいは大阪で受注したものを上海でメンテナンスするというケースも少なくありません。実際、大阪ガスで使っているGIS(地理情報システム)のメンテナンスの一部は、BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)というかたちで、上海法人で行っています。
──日本の情報サービス投資の約7割が首都圏に集中するなかで、国内第二の都市圏である関西ですら、地場市場だけで成長するのは難しいということでしょうか。 平山 ITというものは、基本的にどこで仕事をしても構わない特性があります。これは単に人件費の問題だけではなく、ITや通信ネットワークをフルに活用して、どこにいてもユーザー企業が求める情報サービスを、早く、安く届けることが本分であり、これが競争力の向上につながる。
当社も上海法人でオフショアソフト開発やBPOを経験してみて実感したのですが、場所にとらわれない仕事をするには、開発のプロセスの可視化が不可欠なのです。これまで属人的だった仕事のやり方を見える化することで、国内外の最適なリソースを活用できるようになる。こうしたプロセスの整備は、世界大手SIerが提供しているグローバルデリバリサービスにも通じる重要なポイントです。
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