フォローの風が吹いている──野村総合研究所(NRI)の嶋本正社長は、2014年の国内情報サービス業界の事業環境は明るいとみている。社会保障・税番号制度(番号制度)や東京五輪に向けた社会インフラの整備など景況感の改善が見込めるだけでなく、NRIの強みとする金融分野でも規制対応へのシステム改修や、所有から利用への流れのなかで新たなサービス型の商材への引き合いが強まっているからだ。ただし、公共投資や規制対応だけでは、とくに産業分野のユーザーの売り上げや利益拡大に貢献できるIT投資につながりにくい。NRIは、「顧客の価値を高める」という原理原則を徹底追求する。
フォローの風に舞い上がるな
──社会保障・税番号制度(番号制度)や東京五輪に向けた社会インフラの整備などで、景気が好転するというムードが高まっています。2014年の国内情報サービス市場をどうみておられますか。 嶋本 率直にいえば、「フォローの風が吹いている」という印象です。番号制度については、当社は業界に先駆けて調査研究に着手していて、2013年12月には一般企業が対応すべき事項について実務情報の提供も開始しました。調査を通じて、民間企業や事業所は従業員の給与、福利厚生の業務でさまざまな影響や、場合によってはシステムの手直しが必要なケースが出てくることが判明しています。
当社自身に限れば、国や自治体向けのビジネスは大きなボリュームではないのですが、強みとする金融分野では、2016年1月から導入される番号制度絡みの案件の増加が期待できる。金融分野では、番号制度とは別に、大型の規制対応も相次いでいることから、2013年からすでに上向き始めています。また、証券会社の顧客のなかには、株式売買の出来高に応じてシステムの料金をいただく方式も一部にありますので、東京五輪に関連した社会インフラ投資やアベノミクスなどによって株価が上がったぶん、収入は増えることになります。「所有から利用へ」の流れのなかでサービス型の商材に対する引き合いも好調です。
ただし、市場全体の伸びは1~2%程度にとどまるとみておいたほうが現実的でしょう。当社としても売上高を年率7%で伸ばす体制づくりに取り組んでいますので、国内市場全体の伸びに合わせていたのでは、とうてい達成できません。
もう一つ、注意してみるべきは、2013年に注目されたWindows XPのサポート終了に伴うマイグレーション需要や、NISA(少額投資非課税制度)対応、消費税率の変更で流通・小売業向けの一部システムの手直しのいずれも、ユーザーにとってみれば半ば強制的に出費を迫るものであるという点です。これから本格化する番号制度にしてもユーザーに選択肢はほとんどありませんし、売り上げや利益が増える類いのものでもない。ITベンダー側は、こうした規制対応を機に、これまでにはなかったユーザーメリットを提供していかなければ、ユーザーとの信頼関係を築くことができないと胆に銘じる必要があると考えています。
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