TKCは、会計事務所向けシステムや、その顧問先企業向け財務会計システム、さらには地方公共団体向けシステム分野で大きな存在感を発揮してきた。ただし、2000年代半ばからの業績は横這い状態が続いており、ここにきて、会計事務所との協力関係をテコ入れし、市場の「面」を取りにいく姿勢を鮮明にしている。また、公共分野でも、社会保障・税番号制度のスタートという商機を捉えて、新たなアライアンスを模索している。角一幸社長に、戦略の詳細を聞いた。
金融機関も巻き込んで付加価値を訴求
──TKCにとっては、ユーザーであり、販売パートナーでもある会計事務所は、従来のビジネスモデルが限界を迎えていると指摘されています。 角 会計事務所のなかには、今でも記帳代行こそが税理士業のドル箱だと考えているところが結構あるのは事実です。しかし、中小企業にもPCが普及し、会計ソフトの導入も急速に進んでいますので、そうした仕事はいずれジリ貧になります。
本来、税理士は税務とともに会計のプロでもあり、顧問先企業の経営アドバイザーであるべきなんです。中小企業庁が2012年に、「経営革新等支援機関」の認定制度をスタートさせたのはその象徴です。認定を受けた会計事務所などが、中小企業の経営計画策定や、その遂行などをサポートし、資金の調達力を高めようという仕組みですが、約1万9000の認定機関のうち、その3分の1はTKC会員の会計事務所で、当社はそうした問題意識をパートナーと共有できていると思っています。
──そうした会計事務所を取り巻く環境の変化を、実際にどのように製品・サービスに反映させておられるのでしょうか。 角 TKCの会計システムは、遡ってデータを修正、削除、追加できない仕組みになっているので、決算書の信頼性の高さが保証されます。これは他社システムとの決定的な違いで、金融機関からの融資を受ける際に、非常に大きなメリットになります。実際、銀行の融資担当者などの話を聞くと、企業から提出される決算書は、たとえ税理士が作成したものであっても簡単には信用できないので、本当にその企業の経営実態を表しているのかどうか、さまざまなデータを照らし合わせて検証しなければならず、そこに最も時間とコストがかかっているそうです。
当社は、TKCのシステムユーザーである一般企業に対して、TKC会員の巡回監査の下、TKCのシステムで適時・正確な会計帳簿を作成していることを証明する「記帳適時性証明書」を発行しており、信頼性の高い決算書の作成を強力に支援しています。そして、三菱東京UFJ銀行をはじめ、全国25行が、この「記帳適時性証明書」の提出などを条件に、低金利かつスピーディーな審査で融資をする金融商品を出しています。つまり、企業にとっては、当社のシステムを使い、TKC会員のサポートを受けることで、非常に有利な条件で資金調達ができるだけでなく、経営のコンサルティングサービスも受けることができるわけです。これをTKC会員の会計事務所側からみると、TKCのシステム/サービスをフックにして、顧問先を開拓することもできる。この「記帳適時性証明書」に着目した金融商材を扱う金融機関は今後も増える見込みです。
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