NECの遠藤信博社長は、2014年、ソフトウェア開発を手がける地域子会社の統合をはじめ、組織の大幅なテコ入れを断行し、社会インフラを支えるソリューションを柱とする事業体制づくりに向けて、積極的に動いた。しかし、遠藤社長のミッションはこれで終わりではない。いかに社員の意識を変えて、本格的に社会インフラソリューションに舵を切るか、2015年こそが経営トップの手腕が試される年となる。遠藤社長の下、大きく変わろうとしている日本電気──。社名にその文字が含まれる「本気」を出すことができるか。
SDN案件200件、みえてきた方向感
──遠藤社長は、2014年は「実績の年」だったと言っておられます。ICT(情報通信技術)で社会インフラを支えるソリューション事業を本格的に立ち上げるために、2013年はいろいろな種をまいて、2014年はそれらが実を結んだ、ということだと思います。実績の事例をお聞かせください。 遠藤 2013年4月にスタートした中期経営計画では「グローバル」が重点項目となっており、いかに海外で社会インフラ系の案件を獲得することができるかが、新しいNECをつくるうえでのカギを握ると捉えています。
一例を挙げると、2014年には、米テキサス州立大学と手を組み、ICTによって水道を管理するプロジェクトを走らせました。具体的には、水道管にセンサを設置して漏水がないかどうかを監視し、雨が少ないテキサス州で水道水を無駄なく消費者に届けるための仕組みをつくっていきます。
ちなみに、海外だけではなく、国内においても社長としてうれしく思っている案件を獲得しています。
例えば、中国電力からの受注ですが、同社が運営する島根原子力発電所2号機に、ビッグデータを活用して故障を予兆するシステムを納入する案件がありました。原子力発電所では、故障を予兆して未然に防ぐために、遅くても故障発生の30分前に対策を打たなければならないと聞いています。当社が中国電力に入れたシステムでは、すでに発生の6~7時間前に故障を予兆することを可能にしているので、作業員は余裕をもって、しっかりした対策を講じることができます。
2015年は、こうして、人々の生活の「安全」や「便利」につながるソリューションを積極的に提案し、「成長に向けた年」にしたい。

‘本当に社会インフラソリューションに舵を切ることができるのか──。新年は、社員に「本気」を定着させて、当社の実力を確認するための重要な年です。’ ──このところ、御社が力を入れておられる領域として、ソフトウェアによってネットワークを構築する「Software Defined Network(SDN)」が挙げられます。SDNのビジネス化の進捗についてはいかがでしょうか。 遠藤 現在、SDN関連でおよそ200件の案件の実績をもっています。2014年の春、大きな案件の一つとして、東日本旅客鉄道(JR東日本)に対し、JR東京駅の駅構内ネットワークをSDN技術を活用して構築するプロジェクトが完成しました。
さらに、こちらも目玉の案件ですが、2014年11月には、沖縄県西原町の役場の新庁舎で、SDN方式でネットワークを構築し、「マイナンバー」など、法制度の改正に柔軟に対応できる環境を整えています。
このように、SDN構築の事例は増えており、実績は200件を超えましたが、ビジネス化は初期段階にあるとみています。しかし、案件の増加を受けて、ある程度、方向がみえてきました。これを踏まえて提案活動を加速化し、2015年から、SDN事業を本格的に伸ばしたいと考えています。
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