野村総合研究所(NRI)は、年商4000億円到達を目前に控え、改めて企業価値の向上を図り、NRIらしさを追求する。「アベノミクス」によるフォローの風が吹くなかで、「顧客価値をより高めるにはどうしたらいいのか」(嶋本正社長)を徹底的に突き詰める。顧客の価値が高まれば、自らの企業価値も高まると考える。IT業界にはそのときどきの大きな潮流があるが、この潮流に乗ったとしても、「必ずしもNRIが顧客価値を高めることにはつながらない」というのが嶋本社長の揺るぎない持論だ。2015年、創立50周年を迎える同社は、新しい長期ビジョンの策定を急ぐとともに、最大限の価値を生み出し続ける道を追い求めていく。
フォローの風が吹いている
──過去最高の売上高となる4000億円が今年度(2015年3月期)射程圏内に入っていますね。 嶋本 事業を取り巻く環境には、間違いなくフォローの風が吹いています。いわゆる“アベノミクス”の発動以来、大手を中心に、企業は着実に手元のキャッシュを増やして、このお金をどう有効に使おうかと考えている。事業を拡大するには海外市場にテコ入れしたり、組織の再編、M&A(企業の合併と買収)を仕掛けたりといろいろな動きが活発化しており、こうした企業活動は、当然ながらIT投資がついて回るわけです。私たち情報サービス業界にとって、それだけビジネスチャンスが増えているとみることができます。
当社は旧野村総合研究所と旧野村コンピュータシステムが合併して誕生した経緯もあって、経営コンサルティングとITソリューションの大きく二つの強みをもっています。コンサルティングは、顧客の経営トップがどんなところに課題を抱えているかを把握して、課題の解決方法や、次の一手をどうするのかをいっしょに考えていく仕事です。だから、企業が攻めのフェーズに入っているのか、守りに転じようとしているのかがみえてくるのですが、今年はまさに攻めようとする企業が増加しています。攻めのフェーズではIT投資も活発になるので、ITソリューション事業の伸びも期待できるわけです。
──リーマン・ショック後の一時期、コンサルティング事業が不調になったことを考えると、ある意味、景気動向をいち早く検知するリトマス試験紙のような存在ですね。 嶋本 そうですね。ただ、コンサルティングは守秘義務がありますので、IT投資の情報を掴んだからといって、すぐに当社のIT部隊が営業をかけるというわけにはいきません。このあたりが歯がゆいところですが、旧“研”究所と旧野村“コン”ピュータをかけて“乾坤一擲”と標榜している通り、大枠ではコンサルとITの相乗効果を高めることが当社の強みであることに変わりはありません。
──コンサルといえば、御社は早くから「マイナンバー(社会保障・税番号)制度」を研究してこられたので、情報サービス業界でもNRIのマイナンバー関連レポートを参考にしているという声をよく聞きます。 嶋本 2016年1月から始まるマイナンバー制度の影響範囲は、一般的に考えられている以上に大きいのですよ。社会保障・税番号制度という名称の通り、企業の健康保険や厚生年金の手続き、源泉徴収など、社会保障と税務に関係する業務は基本的にマイナンバーが必要になります。主に役所内での利用に限られていた住基ネット番号とはずいぶん趣が異なるわけで、多くの顧客企業を抱える金融機関の業務でも、さまざまな局面でマイナンバーの提示が求められる見込みです。
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