ビッグデータの切り口は「音声」
──山田社長はセキュリティやビッグデータなどを重点領域に掲げ、新しい技術を取り入れることに積極的な姿勢をみせておられます。そういうふうに、新しいことに挑むマインドをもつようになったのは、どんな経験がきっかけになったのでしょうか。もしあれば、エピソードを披露していただきたい。 山田 そうですね。NTT研究所に在籍した頃ですが、研究交流のプログラムに参加して、6か月ほどドイツの西ベルリンで暮らしました。当時はドイツ再統一の前だったので、(東ドイツの真ん中に位置する)西ベルリンはまるで離れ小島のような場所で、もちろん、私の周りには親しい日本人もいない……。そういう環境だったからこそ、その半年の間に視野が広がり、失敗を恐れずに新しいことに挑戦するようになったと思います。
さらに、NTTデータで部長を務めたときは、2年間、米カリフォルニア州のシリコン・バレーに赴任し、開発拠点の立ち上げに携わりました。シリコン・バレーでは、プログラミング言語「Java」など最新テクノロジーに出会い、それをきっかけに、有望な技術を見極めて、ビジネスとして成功するかどうかを判断するための感覚を磨いてきました。
──御社で、失敗から生まれたヒット商材の実例を教えてください。 山田 すぐに浮かぶのは、当社の特権ID管理ソリューションです。申請管理やアクセス制御といった機能を備えたものですが、発売当初は、内部統制が厳しい大手の金融機関を主なターゲットに据えていました。それを、価格を下げ、徐々に中堅・中小規模の企業に拡大しようとしましたが、あまりうまくいかなかったのが正直なところです。しかし、だからといって、市場のすそ野を広げる戦略をやめるのではなく、もう一回、機能を見直して、例えば、海外対応を実現するなど、グローバル拠点が多い製造業のお客様にとって使いやすくしました。その成果として、大手企業以外でも販売が活性化し、今や、倍々ゲームのような勢いで導入が伸びています。
──現在はどんなソリューションに「挑戦中」ですか。 山田 ビッグデータの領域で、もう少しひねったやり方をして、独自性の強い商材を投入したいと考えています。今は、音声情報を解析してパターンを見つけ出す「ヴォイスマイニング」のツールを、コールセンターを運営するグループ会社に提供しているのですが、もうひと工夫して機能面を磨き、グループ外の、メディア系などのお客様を開拓したい。
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