5年以内に日本と同等数のユーザー獲得を米国で実現する
──河之口社長がこの2年半ほどの間に、とくに力を入れて取り組んできたことは何ですか。 河之口 主力製品のLanScope Catの大幅リニューアルや、モバイルデバイスのマネジメントツール「LanScope An」の最新版リリースなどいろいろあります。とくに昨年リリースしたLanScope Catのバージョン8では、GUI(グラフィック・ユーザー・インターフェース)を全面的に見直して、ユーザーがLanScope Catのたくさんの機能を操作しやすいように改良しました。こうした機能拡張がまず一つ。そして、もう一つは海外市場に打って出るための準備です。
──米国進出ですね。 河之口 そう。この1年ほどの間のことですが、昨年4月に「海外事業企画部」という組織をつくってから、マーケット調査と海外戦略を練り、シリコンバレーに拠点を構える準備を進めてきました。今年の5月から7月の間に、現地法人を設置する予定です。
──ほかの日系IT企業は、アジアをターゲットにする傾向があります。過去、日本のソフトメーカーが米国にチャレンジしたことはありましたが、撤退したケースも少なくありません。決して簡単ではないと思いますが、初の海外進出先として、なぜ米国を選んだのですか。 河之口 主に二つの理由があります。一つは、マーケットの広さとビジネスポテンシャルの高さ。日本は、「個人情報保護法」施行などの影響で、情報漏えい対策やログ収集の取り組みが米国よりも進んでいて、今後、米国でも日本と同様のニーズが出てくるとみています。IT産業では、米国で流行ったものが、数年後に日本で売れるのが一般的ですが、情報漏えい対策やログ収集はその逆。日本で売れたものが、これから米国できっと伸びます。
もう一つは、最先端技術を積極的に採り入れて、スピードが速い米国で“揉まれたい”ということ。IT産業の中心である米国に身を置くことで、先進的な商品をつくることができるともみています。そうなれば、日本のお客様にも新たな価値を提供できるでしょう。
──海外市場の攻略方法を教えてください。 河之口 京セラグループにいた約10年前、シンガポールに常駐して海外事業を立ち上げた経験があるので、海外ビジネスが簡単ではないことは、百も承知です。苦い経験もたくさんしてきました。
過去の経験でいうと、たとえ日本で売れたからといって、それをローカライズしただけでそのまま海外へもっていってもうまくいかないというのが私の持論。各国の事情に合わせて、商品をつくらないと絶対にダメです。なので、LanScope Catの機能のなかで米国でも受け入れられそうな機能を選択して改良し、クラウド技術を活用した新しいサービスを提供します。今、その開発を進めている最中です。
──ターゲットや体制は? 河之口 ターゲットは、中堅・中小クラスの企業。米国には当社が販売しようとしているサービスに似たものはあるのですが、大手企業を対象としているものが多い。情報漏えい対策やログ収集といったものに関する機能を、オール・イン・ワンにし、リーズナブルな価格で提供しようと思っていて、拠点設立と同時にリリースします。体制は、責任者は日本から派遣するつもりですが、実行部隊は、可能な限り現地の人で組織したい。少なくとも、営業とマーケティング担当者は、米国のIT市場をよく知っている米国人を採用するつもりです。
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