将来は中国、東南アジアも攻める
──米国以外の地域でのビジネス展開は考えていますか。 河之口 英語に対応しますので、米国以外の英語圏には段階的に進出するでしょう。それと、アジア。日系企業のアジア進出は活発なので、やはり無視はできません。意識しているのは、中国とシンガポール。拠点がなければ、輸出入にかかる手間をお客様やパートナーにかけてしまうことになりますので、時期は未定ですが、現地法人の設立を予定しています。ただ、まずは米国をどう立ち上げるか、が先決です。
──海外事業は、将来的にどの程度の規模にしますか。 河之口 まずは、3~5年後に日本と同じ数のユーザーを獲得したいですね。将来的には、海外事業全体で全売上高のうち、約30%を占めるまでに成長させるつもりです。
──その頃のMOTEXの年商は、どの程度のイメージですか。 河之口 60億~70億円でしょう。
──かなり挑戦的な数字ですね。 河之口 創業者が築いてきた価値の高い会社を、持続的に成長させるためには海外市場へのチャレンジは、必須です。リスクはあるしお金もかかる。だけど、びびって何もやらなければじり貧になるのは目に見えています。MOTEXの歴史に、海外事業という新しい1ページを加える時です。だから、私は今を「第二創業改革」の時期にあると強く思っています。

‘リスクは当然ある。だけど、びびって何もやらなければじり貧になるのは目に見えている。今、MOTEXの歴史に新しい1ページを加える時です。’<“KEY PERSON”の愛用品>モバイルワークを支えるiPhone インタビュー直前にお願いした「愛用のビジネスツールは?」という“無茶ぶり”に、「とくにこだわっているものはないけどね……」と言いながら選んでくれたのが、iPhoneだ。河之口社長のモバイルワークを支えている。メールや承認・決裁で重宝しているとか。
眼光紙背 ~取材を終えて~
私は、およそ15年にわたって、MOTEXを取材してきた。最初は、大阪のやんちゃな独立系ソフトベンチャーという印象だったが、その面影はすでにない。この間に、日本を代表する大手ソフトメーカーへと、みるみるうちに変貌していった。
約20年間、トップを務めた創業者の高木哲男さんは、独特の考えと雰囲気をもった経営者で、情報セキュリティ業界のカリスマだった。だからこそ、高木さんの退任とKCCSによる買収で会社は激震に襲われるだろうと想像していたが、現実は違って、ベネッセコーポレーションの情報漏えい事件の影響でビジネス環境は追い風を受けているとはいえ、足下の業績は好調。大量の退職者が出るようなことはなく、むしろ「離職した社員が戻ってきたケースもある」そうだ。
河之口さんは、社長就任から約2年を経た直後から「第二創業改革」という言葉を使い始めた。社長就任直後から心に秘めていた言葉のようだが、(この言葉を発信するのに)「2年かかった」という。創業25周年という節目を迎えるMOTEXは、これまで以上におもしろい企業になるに違いない。(鈎)
プロフィール
河之口 達也
河之口 達也(ごのくち たつや)
1967年6月、大阪府生まれ。91年3月に龍谷大学経済学部を卒業して、京セラに入社。2005年、KYOCERA Communication System Asia Pacificに移り、取締役セールス&マーケティングに就任。海外の新規事業に従事。11年、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)に移籍し、ICT事業統括本部ICT第3営業本部本部長を務めた後、12年11月、KCCSがエムオーテックス(MOTEX)を買収したことに伴い、同社の代表取締役社長に就任した。
会社紹介
1990年7月設立のソフトメーカー。本社は大阪府大阪市。主力は、ネットワークセキュリティ総合管理ツール「LanScope Cat」で、富士キメラ総研の調べでは「IT資産/PC構成管理ソフトウェア」分野において10年連続トップシェアを獲得している。2012年11月に京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の子会社になった。