文教と医療の領域に強みをもつ京セラ丸善システムインテグレーション(京セラ丸善SI)は、同業種向けビジネスで最前線を切り開いていく役目を果たしている。文教・医療のいずれもコンピュータメーカー系の大手ベンダーが幅を利かすなか、京セラ丸善SIは株主である京セラコミュニケーションシステム(KCCS)と丸善の経営リソースを巧みに活用しつつ、自らの強みをより先鋭化させて切り込んでいく構えだ。電子カルテや図書館システム、電子書籍など尖った商材を数多くもつ同社だが、真の強みはその背後にある京セラの「アメーバ経営」にある。松木憲一社長に話を聞いた。
“一人前”になれるチャンスが到来
──まずは京セラ丸善システムインテグレーションの経営方針についておたずねします。 今年4月1日付で京セラ丸善SIの社長に就任しましたが、個人的には前職の京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の常務とは比べ物にならないくらいの重責を感じつつも、「やっとこれで一人前になれるチャンス」と受け止めています。
──つまり、どういうことでしょうか。 一部門を任される、あるいは一領域の担当役員であるのと、一つの会社を任されるのでは、見える景色がまったく違う。正直、これまではおよそ学生のように、周囲から守られていたと思えるようになりました。その一方で、当社はKCCSと丸善の合弁会社であり、「京セラ」と「丸善」の二つの老舗の看板を背負っている会社でもあります。京セラは稲盛和夫氏、丸善は早矢仕有的氏という誰もがその名を知る有名人が創業者。そうした会社の業績をどう伸ばすのか、社長である私の双肩にかかっていると考えると、プレッシャーを感じないほうがおかしいですし、事業をさらに伸ばせれば、経営者として独り立ちし、一人前になれる気がするのです。
──具体的にどうしますか。 当社は、文教と医療の二つの業種にほぼ特化したSIerで、図書館システムや電子カルテ、電子書籍などのパッケージもつくっています。KCCS側からみると、文教と医療市場を切り開くための最前線に立つグループ会社という位置づけです。文教・医療という二つの大きな市場ですが、この市場にはコンピュータメーカー系の大手ベンダーが幅を利かしています。そんななかにあって、当社としてもより深く切り込んでいくことが欠かせません。
文教関連システムでは、電子書籍「BookLooper(ブックルーパー)」が好調に推移しています。電子書籍といえば、Amazonを連想しがちですが、書籍を扱っている大学や図書館が、じゃあAmazonのシステムを使えるかといえば、使えませんよね。当社の「BookLooper」は大学や図書館が所有している教科書や図書を電子化し、学生や利用者に使ってもらう仕組みです。株主である丸善は書籍販売を通じて版権をもつ出版社と深い関係にありますし、当社はこれまでの図書館や教育機関向けのシステムの開発を通じて、システムを使うユーザーと版元の双方のメリットになるようノウハウを蓄積してきました。一般向けではなく、あくまでも文教領域に特化している点が強みです。
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