付加価値はすなわち利益の源泉
──医療分野についても聞かせていただけますか。 医療においても、先の文教と同様、尖ったシステムをつくり込んでいます。その代表的なものが精神科病院向け電子カルテと栄養給食管理システムです。精神科は他の診療科に比べて記述する部分が多く、ワークフローも異なるケースが多い。当社の電子カルテは精神科の医師がよく使う単語や言い回しの入力がスムーズにいくよう支援するなど専用の設計になっています。また、栄養給食管理は病院や社員食堂などで活用していただいておりまして、こうした特定分野に強いのが当社の特徴です。
KCCSグループで当社とは兄弟会社となるKCCSマネジメントコンサルティングがあるのですが、この会社は京セラ独自の経営管理手法「アメーバ経営」を継承する京セラグループ唯一の経営コンサルティングを手がけています。実は医療・介護分野においてもアメーバ経営の手法によるコンサルティングによって大きな効果を発揮しており、当社とお互いの強みを生かす補完関係にあります。超高齢化社会の度合いが増すなか、病院経営は決して楽観できる状況ではありません。ITシステムと経営コンサルティングの両面で、KCCSグループとして取り組んでいく方針です。
──先ほど、「一人前」についてのお話が出ましたが、それこそ京セラのアメーバ経営は、部門長はもちろん、末端の係長クラスでも独立採算が基本だとうかがっています。 独立採算というか、付加価値をどう顧客に認めてもらえるかと表現したほうがわかりやすいかもしれませんね。私も、駆け出しの頃、故郷の鹿児島県にある国分工場で、生産管理などの情報システムを担当していました。情シスの“顧客”は生産ラインの方々ですので、社内取引ではあるものの、情シスが生み出す付加価値をラインの方々に認めてもらい、情シスの“利益”に相当する対価をちゃんともらうところから始めました。付加価値はすなわち利益の源泉ですからね。
──どうやって付加価値を認めてもらったのですか。 それが、これほど難しいことはほかにないというほど苦戦しました(苦笑)。当時は、情シスで数人の部下をもつ係長になったばかりで、気合いだけは十分でしたが、普段は優しい事業部長も、いざ価格交渉に入ると「そんなに要るの?」と、暗にサービスに見合うだけの価値は認められないと渋るんですよ。
情シスの付加価値を認めてもらうのは難しいのですが、それがアメーバ経営の基本ですので、こちらも考えなければなりません。要は私たちが運用しているシステムを使うことで、「事業部門の売り上げや利益がこれだけ増えました。だから生み出した価値のうち、これだけを情シスの付加価値としていただけませんか」と提案したわけです。
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