5年で売上高50億円へ
──売上高(20億4800万円)、経常利益(4億9900万円)とも、15年3月期は過去最高でした。 データ連携という意味では、EDIだけでなく、ETL(データ抽出/加工/書き出し)やEAI(企業内アプリケーション統合)にもビジネス領域を広げています。ただ、実際に当社のお客様が価値を感じてくれているのは、EDIによる企業間取引のための対外接続という範囲にとどまっているのが現状です。そして、この市場はそれほど伸びていなくて、ほぼ横ばいです。
それでも、これまでわれわれのEDI製品が使われていなかった分野では新しい提案ができるのではないかと思っています。例えば、いま一番期待しているのは、電力の分野です。小売りの自由化により、複数の企業間でデータをやりとりするニーズは間違いなく増えます。ヘルスケアも、データを共有したり移送したり、さらにそれを可視化しなければならないという流れは加速するでしょうから、有望です。また、汎用機からオープン系へのレガシーマイグレーションに伴って、まだまだEDIパッケージの大口案件も期待できると考えています。事実、昨年から今年にかけては、こうした需要が業績に貢献してくれました。
──とはいえ、EDIだけの市場では、頭打ちの感があるということですね。 現在、EDI、ETL、EAIのニーズに一元的に応えるデータインテグレーション製品の開発が佳境に入っています。従来の主力であるEDI「ACMS」シリーズの後継となる製品で、コードネーム「BACH」と呼んでいるものなのですが、これを来期には市場に投入します。例えば、EAIだけでも、EDIの10倍くらいの規模にあたる、400億~500億円規模の潜在的な市場があるという調査結果もあります。社内外を問わず、あらゆるデータをシームレスにつないで、その流れを可視化することの価値を以前から当社は訴求してきました。そうしたコンセプトを実際に市場に浸透させるための製品が出そろうことになります。また、データ移行ソリューションとして拡販を進めているデータハンドリングプラットフォーム「RACCOON」も、今後の主軸になる製品だと考えています。
──新製品が業績に与えるインパクトをどう捉えておられますか。 弊社は昨年、本格的な事業展開から30周年を迎えましたが、次の30年の礎を築くのが私のミッションだと思っています。5年以内に売上高50億円を突破したいというのが具体的な目標ですが、これらの新製品は、目標達成のための強烈な追い風になると期待しています。

‘あらゆるデータをシームレスにつなぐ。その流れを可視化できる製品が来期には出そろうことになる。’<“KEY PERSON”の愛用品>カメラ性能に高評価 Androidのアプリケーションを使いたいという理由で、スマートフォンはXperiaを選んだ。写真撮影が趣味の武田社長だが、「デジタルカメラとしても優秀で、スナップレベルならこれで十分」とべた褒め。日々の生活に欠かせない。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「経営者としてのスタイルはこれから模索していく」と話すが、経営陣としての長年の経験から、基本的なスタンスは固まっている印象だ。根底にあるのは、「社員が財産」という考え方。「社員の潜在的な力は確実にある。それをもっと引き出せるようにしたいし、すでに顕在化しているものもさらに伸ばすことができるように、一人ひとりが能力の向上に取り組み、喜んで働いてくれる環境をつくっていきたい」と抱負を語る。社員が納得して働き、力を存分に発揮してくれるような組織づくりを目指す。
ユーザー企業があらゆるデータをフル活用して業績向上につなげられるようにする、“攻めのIT投資”の喚起がIT市場全体の現実的な課題にようやくなりつつある今、データ連携ソリューションの市場も大きく広がる可能性がある。フォールトトレラントコンピュータのSI時代から培ってきた「信頼」を武器に、新たな成長事業の確立に挑む。(霞)
プロフィール
武田 好修
武田 好修(たけだ よしのぶ)
1952年5月生まれの63歳。76年、ディジタルコンピュータ(現在のワイ・ディ・シー)に入社。86年にデータ・アプリケーションに出向し、取締役就任。88年、同社に転籍。以降、常務取締役専務、取締役常務執行役員CTOなどを歴任。技術開発やマーケティング部門を中心に、長期間、経営陣の一角として活躍してきた。今年4月より現職。
会社紹介
1982年に、ディジタルコンピュータ(現在のワイ・ディ・シー)の関連会社として発足し、85年、本格的に事業を開始。現在は、EDI(電子データ交換)ソフトやEAI(企業内アプリケーション統合)ソフトの大手パッケージベンダーとして事業展開する。とくにEDIソフトでは、1600社、6500サイト以上で導入されているトップベンダー(同社調べ)。2007年にジャスダック上場。直近(15年3月期)の売上高は20億4800万円、経常利益4億9900万円で、いずれも過去最高。