SE談義ですか! 長くなりますよ
──JISA会長という大役を引き受けるに当たって、どのような心境だったのでしょうか。 お声を掛けていただいたとき、二つ返事で引き受けました。そもそも、私はあまり難しいことを考えるタイプではありませんからね。駆け出しのSEから今まで40年あまり、ずっと情報サービス業界に身を置く者として、何かこの業界に貢献できる部分があると評価いただいたからこそお声がけをいただいたわけです。私としても自分を育ててくれた業界に恩返ししたいという思いから、迷うことなく引き受けさせていただきました。
──横塚さんのSE時代のエピソードをお聞かせいただけませんか。 SE談義ですか! 長くなりますよ(笑)。この業界のエンジニアの約7割はベンダーに所属し、約3割がユーザー企業の情報システム部門に所属しており、私は後者でやってきました。両者の仕事の内容は大きく変わるものではなく、ユーザー部門のビジネスに役立つソフトをつくることです。
私がSEになった1970年代は、正直、コンピュータでできることなんて限られていましたので、この非力な計算機をどうやったらビジネスに役立てられるのかを必死に考えていたわけです。ところが90年代に入るとコンピュータの性能が指数関数的に向上して、ソフトウェアの開発規模もどんどん拡大しました。そうなると部分的な開発だけを担当するSEが増えて、ユーザーのビジネスがみえにくくなる現象が顕著になってきました。
ユーザー部門はソフトウェアのプロではありませんので、「こんなことをしたい」「こんなことができたらいいな」と言うのですが、この通りにソフトをつくると、まあ、うまくいかないですね。私も販売管理系のデータベースを10回くらいつくり直した苦い経験があって、「ユーザーの言うことを鵜呑みにしてはダメだ」と痛感しています。
──では、どうすればよいとお考えですか。 ユーザーがどんなビジネスをしていて、そのビジネスを成功に導くためにITやソフトウェアでできることはどこかを“えぐって”いくんですよ。徹底的に聞き込んで、エンジニア自身も必死になって考える。「こう言われたから、言われた通りつくりました」ではダメ。うまくいきません。ユーザーのビジネスを掘り下げて、自分なりの回答を出して、さらに結果を出す。こうしたエンジニアの層が厚みを増せば増すほど、日本のすべての産業は世界との競争のなかでぐっと強さを増すわけです。
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