国内最大級、もしかしたら世界でも最大規模かもしれない駅伝大会がある。「NIPPON IT チャリティ駅伝」だ。第1回目の2010年から毎年開催している同大会は、参加チームが年々増えていて、第5回開催の昨年は実に700チームを超えた。今年の開催は11月15日。IT業界で働く人を元気にすることを目的に始まった駅伝大会だが、企画したのは、IT業界とは縁もゆかりもないはずのチャック・ウィルソンさん。なぜ、チャックさんがIT業界を元気にしようと思ったのか。そもそもなぜ駅伝なのか。ITチャリティ駅伝のなぞに迫る。
チャリティ駅伝は40年前から
──ITチャリティ駅伝は、チャックさんの企画ですか? そうですよ。アメリカでは、みんなで参加して盛り上がる駅伝大会がけっこうあるんです。
──アメリカに駅伝が? あるある。今と同じかどうかはわからないけど、企業もやるし、地域でもやった。で、40年くらい前のことですが、ジャパンタイムズという英字新聞がありますよね。そこで募金を集めて車いすを買って、必要な人にあげていたわけ。「記事を書くので寄付をください」という方法で集めていたから、駅伝大会をやったらどうですかと提案したんです。当時から皇居の周りを走る人がたくさんいましたから、いけそうだと。意外にも最初から盛り上がって、8年間やりましたね。
それから、YMCAでも障がい者支援のためにお金を集めていたので、ジャパンタイムズの実績を例にチャリティ駅伝を提案したんです。でも、最初は「やらない」って。「運営費を負担するから、成功したら返して」という条件で、何とか駅伝を開催したんです。これがまた、けっこううまくいったんです。
──何年くらい前ですか? あれはね、30年くらい前。YMCAは東京で始めて、横浜、名古屋でもやって、今では全国20か所でチャリティ駅伝をやっているんですよ。YMCAは今でもチャリティ駅伝をやっています。ほかにも、乳がんの患者支援とか、カンボジアの地雷撤去とか、いっぱいやりましたよ。
──チャリティと駅伝は、相性がいいんですね。それがITチャリティ駅伝につながるわけですが、どんなきっかけがあったのですか。 障がい者雇用に取り組んでいるアイエスエフネットという会社があるのですが、その社長の渡邉(幸義)さんからNPOをつくったという連絡があって、「何をするんですか」と聞いたら、弱者支援ということで、「企業にお話をしてお金を集める」と言うわけ。そういうのって、最初はうまくいっても、なかなか続かないでしょ。だから、駅伝をやろうよって。
手作りで始めたけど、最初から運営は100点でしたね。2回目で参加が400チームですよ。去年は700チームを超えたし、今年は1000チームが目標だな。
──本当ですか? ただ、場所がね。お台場で1000チームはちょっとムリだね。
──去年も、スタートラインが大混雑でした。 そうそう。ITチャリティ駅伝って名前になっているけど、参加チームはIT業界だけじゃなくて、本気のチームも参加しているから。これほど大規模な駅伝大会は、あまりないと思うよ。
──ITチャリティ駅伝の開会式では、チャックさんがステージに立って、参加者全員と一緒にチャック体操をやるじゃないですか。あれも盛り上がりますよね。 大会実行委員長ですが、エンターテイナーとしても参加しているので、僕がチャック体操をやるのは、みんなが笑って、楽しんでもらえばいいんじゃないかなと思って。
──あの体操はご自身で考えられたのですか。 日本にエアロビクスを紹介したのは、僕なんだよね。日本に紹介というと言い過ぎかもしれないけど、女性体育教諭の集会で、1時間の理論と1時間くらいの実技指導をしたのが、日本で最初なんです。
──チャック体操の原点は、エアロビクスなんですね。 今は2曲しかやらないけど、最初の頃は4曲くらいやった。でも、みんな疲れちゃうんだよね。IT業界は体力がないんじゃないかなって気がするけどね(笑)。
いい加減に見えるかもしれないけど、チャック体操はちゃんと計算の上にやっていますから。最初はゆっくりやって、筋肉やアキレスけんとかを伸ばす。次は、ちょっとだけ体内の酸素の量が高まるようにしています。
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