近年、デルはグローバルでトータルソリューションベンダーへの転換、パートナービジネスの強化を重点方針として掲げてきた。8月に日本法人の社長に就任した平手智行氏にとって、そのギアを一段押し上げることが最重要ミッションであろうことは想像に難くない。日本IBMで総合ITベンダーならではのビッグプロジェクトや、パートナーとの連携を推進してきたキャリアの持ち主である平手氏が、かつてのライバルであるデルという新天地で構想するビジョンに迫る。
クラウドは浸透したが課題も多い
──デルとは競合ともいえるベンダーでキャリアを積んでこられたわけですが、トップに就任されて、デルのユニークな点はどこだと感じておられますか。 一番は、宮崎のカスタマーセンターを中心としたテクニカルサポートチームが、お客様の業務遂行における課題の解決に真摯に取り組んでいる点です。プリセールスからポストセールスまで、一生懸命取り組む姿勢を非常に高く評価していただいています。経営者として、心強いですね。
──2011年にIBMから通信大手のベライゾンに移籍されたわけですが、顧客のITに対するニーズもかなり変わっています。 クラウドが一般化したようにみえますが、実際は非常に課題が多いですね。オンプレミスで構築した大規模なアプリケーションがあるとして、単純にインフラやプラットフォームをクラウドにしただけで、IT費用の7割~8割を占めるといわれるアプリケーションのレイヤでは、ワークロードや運用・保守のコストがほとんど変わっていないという事例もよく見受けられます。
日本のIT業界に求められているのは、日本企業が世界で競争力を発揮していくためのイノベーティブなビジネスモデルの構築をITで支援することです。そのためには、できるだけ早くレガシーシステムの負担が収束するように働きかけ、お客様の人、モノ、カネ、時間という資源を解放し、これをビジネス変革のためにクラウドネイティブな世界に投入していただくことが必要だと考えています。レガシーシステムが日本企業の成長に大きな貢献をしてきたことは間違いありませんし、過去、私もそうした世界で生きてきました。でも、時代は常に移り変わっていくことを肝に銘じるべきです。われわれも含めて、業界全般の大きな課題ですね。
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