グローバル化でよい人材の確保へ
──アジアやASEANのビジネスについては。 アジアやASEANは、日本に対してシンパシーを感じている国も多いですし、日本企業が進出する傾向も強くなっている。そのなかで、現地をサポートするSI会社として当社を選択してもらって、また、ソリューションを買ってもらえるよう、取り組んでいきます。加えて、現在拠点のあるシンガポールやマレーシアでは、現地の人の採用を進めています。それらの社員が育ったら、現地の法人をお客様として獲得するローカルビジネスに着手します。富士通グループでも、日本をアジアの一つとして捉えて、アジア全体のビジネスを拡大することをコンセプトに据えています。当社も、日本だけに固執せずアジアを視野に入れて進めていきます。
──グローバル化は、よい人材を採用することにもつながる。 その通りです。今は、当社の社員が西日本を中心に各地を動き回っていますが、10年後はアジアやASEANを含めて動き回るという環境を整えます。そのほうが、学生も絶対に当社を魅力的に感じる。グローバル化を進めないとよい人材が入ってこない。先日、学生向けにハッカソンを実施したのですが、参加者から「ワクワク・ドキドキした」という評価をもらいました。このような感覚がないと、やりがいを感じないと思うんです。今の若者はキャリアアップを求めている。グローバルを中心に会社側で選択肢を広げることが必要だと確信しています。
──先ほどソリューション営業を配置するとの話がありましたが、社員のスキルアップを図るために取り組んでいることはあるのですか。 お客様の多様化したニーズに応えるため、SEはコミュニケーション力が必要となっています。先ほどのソリューション営業を配置するというのは、SEがプロジェクトマネジメントに長けているからこそできるのです。プラス、現場で必要なのはチーム力です。現在、チーム力を高める取り組みを進めています。
──具体的な目標や会社として目指すべき姿は。 (SIの)技術力、人間力、そしてチーム力を社内の共通言語に、その大切さを社員に浸透させて、国内外で当社のブランド力を高めながら「プロフェッショナルカンパニー」を目指します。

‘技術力、人間力、そしてチーム力を社内の共通言語に、その大切さを社員に浸透させて、国内外で当社のブランド力を高めながら「プロフェッショナルカンパニー」を目指します。’<“KEY PERSON”の愛用品>時間の合間に書けるのが便利 5年にわたって愛用しているポメラ。1か月に3回程度、社員に向けてメッセージを送っており、その下書きに時間の合間をみつけて使っている。「さっと立ち上げ、すぐに書けるのが便利」とのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
社員の人材育成として、宮田社長が採り入れたのは「TOC理論」。「目標を達成するには、どのようにしたらよいか、ということを組織やチームで共通の意識をもたせるようにしている」という。例えば、「この仕事は今日の17時30分までに終わらせる」ということを目標に据えたならば、割り込みが入っても、目標を達成しなければならない業務に没頭する。この集中力によって社員のスキルがアップするというわけだ。成果物は、生産性や品質が高くなり、しかも生活残業を改善することにもつながる。定時に業務を終了させることが習慣化すれば、定時に帰らなければならず他の社員の目を気にしていた、子どもをもつSEの女性も前線で働くことができる。
限られた時間で有意義な仕事を行う。ウォーターフォール型からアジャイル型になっている時代に即したスキルアップだ。(郁)
プロフィール
宮田 一雄
宮田 一雄(みやた かずお)
1954年7月2日生まれ。77年3月、大阪大学基礎工学部機械工学科卒業。同年4月、富士通に入社。システムインテグレーション事業本部や通信ユーティリティソリューション本部などを経て、04年6月に経営執行役、09年6月に執行役員。11年6月、富士通アドバンストソリューションズ(現・富士通ミッションクリティカルシステムズ)社長に就任。15年4月、富士通システムズ・ウエストの代表取締役兼執行役員社長に就任。
会社紹介
富士通関西システムズ、富士通中部システムズ、富士通中国システムズ、富士通岡山システムエンジニアリング、富士通四国システムズ、富士通西日本アプリケーションズの6社が統合して2012年4月に設立。初年度(12年度)の業績は、売上高が926億円、営業利益が85億円。以降、13年度が売上973億円、営業利益106億円、14年度が売上991億円、営業利益114億円と増収増益を果たしている。今はSIが中心だが、ソリューション提供もビジネスの柱に据えようとしている。