“モノ売り”の意識はまったくない
──失礼な言い回しになってしまいますが、御社のSI事業は旧住友金属システムソリューションズ、旧アルゴ21などをグループに迎え入れることで拡大してきた経緯があり、キヤノン本体の事業とは系統が違うというか、外様的な立ち位置ともみえます。 それは違う。確かにM&A(企業の合併と買収)でITソリューション事業の拡大に勢いをつけてきたのは事実ですが、例えばキヤノンの複合機、ネットワークカメラ、ハンディターミナルなどは、今やバックエンドで動く業務システムと一体的になって真価を発揮できる。
こうしたキヤノン製品をより多く売るために、どのようなシステムやサービスを開発すべきなのかを、キヤノングループとともに考え、実行する役割を担っています。製品への組み込みソフトなんかも多く手がけていますし、これから成長が期待される医用画像のオンライン保管といった領域でも、ドキュメントやイメージング(画像、映像)に強いキヤノンの強みを生かせます。キヤノンITSメディカルや、14年にキヤノンMJグループに加わったAZEなど、医療や医用画像のシステムに強いグループ会社との連携も“キヤノンらしさ”の一面でしょう。
──神森社長ご自身は、キヤノンでどのようなキャリアをおもちなのでしょうか。 キヤノン販売(現キヤノンMJ)に入社してから、プリンタの販売がキャリアの本格的なスタートでした。
80年代から90年代の初めくらいまでのプリンタは、今のプリンタと大きく異なり、コンピュータメーカーが要求する仕様に合わせてつくりこんでいく方式で、形式的にはメーカーに向けたOEM(相手先ブランドでの販売)。若い人たちにはイメージが湧かないかもしれませんが、プリンタがどのコンピュータでも動くマルチベンダー方式になったのは、その後の話です。
プリンタの販売ではあるものの、メーカーごとにつくりこんでいく方式ですから“モノ”を販売しているという意識は、まったくありませんでしたね。メーカーごとにプリント機能の方式や要求仕様が異なりますので、ユーザーの話をよく聞き込んで、じゃあ、「こんな機能をもったコントローラを開発しますのでいかがでしょうか」などと、提案するわけです。プリンタを売っているのだけれども、本質的には、提案力であったり、技術のレベルの高さ、品質保証、アフターサービスの体制に価値がある。
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