新しいビジネスの創出に努力
──経営指標を明確に示すだけでは、転落せずに「踏みとどまる」ことにはならないような気がするのですが。 もちろんそうですよ。一発逆転の奇跡的な特効薬なんて、現実には存在しません。ひとりの経営者として、その思いを社員一人ひとりに伝えるところから始めました。あのときは社内の200くらいの「部」や「室」に足を運び、少人数のメンバーで車座になって話し合い、「金融だけでなく、産業分野も伸ばすにはどうしたらいいのか」「既存の2大顧客に匹敵するような大口顧客をどう獲得していくべきなのか」と議論しました。文字通り膝をつき合わせて話し合うとこで経営側の危機感が社員にも伝わり、組織横断的な取り組みが本格化するきっかけになりました。
──組織横断的な取り組みといいますと。 端的に言えば、組織の壁をできるだけ低くして、柔らかいつながりでNRIの多様な能力をまとめあげていく方向へともっていったわけです。つまり、コンサルティングやアプリケーション、サービス、BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)、IT基盤といった部門同士の横の連携を促進することで、新しいビジネスの創出に努め、その結果、震災の混乱を乗り越えて、12年3月期から増収増益基調への転換につなげられました。
──一連の取り組みで多くの新ビジネスを創出されてこられたと思いますが、嶋本さんが印象に残っている案件はなんですか。 そうですね、産業分野の拡大の流れのなかで、食品メーカーの味の素のシステム子会社の味の素システムテクノ(現NRIシステムテクノ)をグループに迎え入れられたことや、化粧品メーカーの資生堂のオムニチャネル化の一環として開設した「ワタシプラス(watashi+)」などが印象に残っています。資生堂は経験豊富なスタッフによる化粧品の対面販売を重視してきたのですが、オンラインでもカウンセリングを受けられる仕組みを採り入れたのがワタシプラスの画期的なところです。あのときは、コンサルティングを此本(臣吾専務=次期社長)が受けもち、私がITシステムを連携させる部門をみていました。
BCNのインタビューで何度か話していることかもしれませんが、88年に合併した旧野村総合研究所の「研」と、旧野村コンピュータシステムの「コン」をもじって、「乾坤一擲」といっているのですね。要はコンサルティングとITシステムをクルマの両輪のように連携させることが、NRIらしい新ビジネスの創出につながると。資生堂のケースは、まさにその「乾坤一擲」の好事例として強く印象に残っています。
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