ヨーロッパの名門電機メーカー・シュナイダーエレクトリック。IT製品としてはAPCブランドのUPS(無停電電源装置)やデータセンター向けのラック・空調機などを主力とするが、電機業界では競合も多い日本市場で、シュナイダーの版図をどのように広げていくか。昨年1月に代表取締役に就任した松崎耕介氏は、電力に対する関心が高まっている今が同社にとってのチャンスだと強調する。
震災でエネルギー業界になびく
──シュナイダーエレクトリック(シュナイダー)に入られる前は、日本IBMに30年間勤められていました。IBMから電機メーカーへという転身は、最近では異色のキャリアのようにみえますが、なぜシュナイダーを選ばれたのですか。 確かに、IBMからはIT企業に転職するのが一般的ですが、私の場合、ITの経験を生かしつつ、もう少し社会インフラ寄りの仕事をしてみたいと思っていました。そう考えるようになったきっかけは、2011年の東日本大震災です。地震発生から1か月経って仙台空港が運用再開し、私もその週にIBMの仙台事業所を訪れましたが、そのとき仙台郊外の社員は、まだ自宅の電気が復旧していませんでした。それまで日本はほとんど停電がなく、高品質の電力が安定して供給されるのがあたりまえの国でした。しかし、現代においても1か月以上電気がこない状況が実際に発生した。日本社会に「電気はいつも必ずくるものではない」という認識が広がりました。私も、エネルギーの重要性にあらためて気づいたのです。
──震災以降、データセンター事業者などの間で電力効率への関心がいっそう高まったといわれていますが、松崎さんご自身の意識の面でも、大きなターニングポイントだったと。 企業活動においてITは欠かせないものになっていますが、シンプルに言えば、「そのITを動かすために、電気は欠かせないですよね」という話です。日本人は真面目なので、震災の後、輪番停電で街が暗くなっても文句を言わなかった。その国民性はすばらしいと思いますが、エネルギーに関して我慢を強いるだけではなく、効率化を図ることで解決できる問題もあるのではないかと。そこで役立つソリューションや、グローバルで培ったノウハウをもっている会社がシュナイダーだったのです。
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