UPSは微増、DCは2ケタ成長
──シュナイダーのIT事業では、APCブランドのUPSのイメージが強いですが、今後の成長戦略を教えてください。 日本市場におけるIT事業は大きく分けると、サーバーなどに取り付ける小型UPS事業と、データセンター向けソリューション事業の二つがあります。前者では、いままでUPSをあまり必要としていなかったサーバー以外の機器に対しての提案を拡大し、新たな市場を開拓していく戦略をとっています。追い風の一つはIoTです。FA機器やネットワーク機器の重要性が以前にも増して高まっており、停電時にいきなり落ちては困るということで、UPSを導入いただく例が増えています。また、2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、防犯カメラをはじめとするセキュリティ機器でもUPSの需要があると考えています。
──定期的なリプレース需要のあるUPSとはいえ、市場開拓はかなり積極的に行っているようですね。 サーバーの出荷台数が2ケタ成長で伸びている新興市場であれば、UPSは何もしなくても伸びていくと思いますが、日本は成熟市場で、何も手を打たなければサーバーの台数とともにこの先売り上げは下がってしまいますからね。しかもUPSはすでに当社のシェアが非常に大きい分野ですので、これからガンガン伸びていくことはない。維持か微増を目指すイメージです。ただ、日本は保守に入っていただいているお客様の割合が高く、利益率が高いという特徴もあります。
──データセンター向けの製品は今後需要がさらに拡大しそうですが、設備産業でもあるので、日本の既存メーカーが強いという難しさもあります。 データセンター市場向け事業では、日本に多くの競合他社がありますが、おかげさまで15年は、前年比2ケタ成長を達成できました。われわれがデータセンターに提供している製品には、大型UPSを含む電源設備、空調設備、ラック製品、そしてエネルギーを管理するソフトウェアなどがありますが、これらをすべて1社で揃えているのは、日本で事業を行っているベンダーでは当社だけです。
──個別の製品ではなく、シュナイダー製品で揃えることのメリットは。 例えば、空調機器は国内のエアコンメーカー各社が強い分野ですが、本来データセンターでは部屋全体をキンキンに冷やしておく必要はなく、熱いサーバーだけを冷却すればいいわけです。当社のラックや冷却システムはこの考え方で設計されており、エネルギー効率が高い。また、ラックに設置するPDUと呼ぶ電源タップがありますが、電力の高度なモニタリングが可能です。トータルソリューションがもつ、このような価値をご理解いただけるお客様が増えており、事業の成長につながっています。
──日本では、「シュナイダー」と聞いて何の会社かすぐ思い浮かぶ人はIT業界でもまだそれほど多くないように思いますが……。 これだけ歴史のある会社ですからね。日本でもっと知名度が上がってもいいと思いますね。ただ、ブランド認知度を調査したところ、14年は「APC」に対して「シュナイダーエレクトリック」は半分以下の認知度しかありませんでしたが、15年の調査ではほとんど追いつくところまできているんですよ。APCブランドの強さを生かしつつ、それだけでないシュナイダーの強みを訴求していきたいと思います。ブランド認知度がすぐ売り上げに響くとは考えていませんが、われわれやパートナー各社がお客様とお話しするとき、シュナイダーの名前をご存じかどうかで最初のハードルが違いますからね。
──B2B向けのIT製品だと、業界のプロに名前が知られていれば十分と考えるベンダーもありますが、シュナイダーの名前を広く売っていきたいと。 一番は、実は社員のモチベーションに関わる部分なのです。子どもから「お父さんの会社、この間新聞に出ていたよ」と言われる機会があるかないかが、後々効いてくるのではないかと(笑)。
[次のページ]