過重労働の危険を事前にアラート
──最近は、就業時間に対する管理の必要性が高まっているように思いますが、御社システムで何か工夫をされていますか。 一つは、昨年12月に施行された「改正労働衛生法」にもとづく「ストレスチェック制度」。これに、当社システムが直接対応するということではありませんが、「ストレスは過重労働」が要因の一つですので、当社システムで対応できる部分があります。これまでの就業管理システムは、タイムレコーダーで従業員が打刻した結果を集計し、給与にアウトプットするだけでしたが、新しい「テレタイムZ」は、各月10日間ほど経過したところで残業時間を計算し、残りの就業日数から予測して、残業超過のワーニングを出す仕組みにしました。競合他社にない機能ということもあって、引き合いが増えています。
──御社システムの販売が伸びるトリガーは、多そうですね。 今年4月1日に施行する「女性活躍推進法」もその一つです。求人を出す際に、会社で雇用する女性の数や就業状況などを公表する必要があります。以前から当社システムに盛り込まれていますが、今年3月リリースのクロノスでは、これに必要な帳票が出るようにする計画です。
──「クロノスクラウド」と「テレタイムクラウド」を1年前から展開していますが、狙いはなんですか。 当社にとって大事なのは、タイムレコーダーの「テレタイムクラウド」です。タイムレコーダーは受信側にあり、クロノス側からタイムレコーダーにデータを取りにいくかたちです。ただ、一般的にはVPNを引くことになるので費用がかさみます。当社のクラウドは、タイムレコーダーがインターネット経由で当社データセンターにデータを渡す仕組みです。サーバーやVPNが不要なため、会社に出勤しない営業担当者や派遣社員でも、スマートフォンなどがあれば打刻できます。1年前に発売しましたが、ユーザーが増えれば未来の資産になると思っています。
──将来の成長をどう考えていますか。 今期(2016年3月期)の売上高は7.5億円を見込んでいます。これを、2020年までに10億円にする目標を立てています。従来の販路と異なるルートを開拓し、学校や病院などにも波及させたいです。

‘就業管理システムは、大手企業で50%、中小企業で20%に導入されている程度。まだまだ、市場のポテンシャルは高い’<“KEY PERSON”の愛用品>毎日、通勤は自転車 イタリアのトリノを拠点とする伝統ブランド「GIOS(ジオス)」の自転車。同製品のブランドカラーは青だが、濱田社長はあえて白を選択。毎日、雨の日を除き、自宅から東京・信濃町の会社まで10km程度の距離を運転して通勤している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「就業管理システム」の専業ベンダーで社長を務めているだけに、硬いイメージを抱く人は多い。しかし、濱田淨史社長にその印象は感じない。現在はIT業界に身を置いているが、若い頃にたどった経歴を聞くと、それが理解できる。
取材日の前には、ニュージーランドで休養していたという。ここで長く仕事をしていたため、よく旅行するそうだ。「英語を覚えたくて」と、デパートとクリーニング店で働いた。結果的に、今はIT業界にいるが、一つ路線を違えば、別な業界で活躍していただろう。
同社関係者に聞くと、濱田社長はこうした経験があってか「アイデアマン」という。アマノといった競合他社は強力だが、独自のユニークな発想で事業を急成長させた。PCAとの連携で販路も拡大した。後は「知名度を上げること」と、就業管理システムといえば「クロノス」という印象をどこまで高められるかが、同社の成長のカギを握りそうだ。(吾)
プロフィール
濱田 淨史
濱田 淨史(はまだ きよし)
1953年9月、東京港区三田生まれの62歳。75年に東京観光専門学校を卒業後、仕事先をニュージーランドに求め、Farmers'TradingというデパートとAVBO Cleaning Serviceというクリーニング会社に約3年勤務。80年には帰国し、全自動麻雀卓の販売会社に14年間勤めた後、95年に現クロノスの事業部があったエル・エス・アイジャパンに入社、取締役に就任。2011年にピー・シー・エーの子会社として独立してから現職。
会社紹介
放送機器・通信システム開発会社、エル・エス・アイジャパンの就業管理システム部門が前身。2011年5月には、同部門が会計ソフトウェアのピー・シー・エー(PCA)に事業譲渡され、同社子会社「クロノス」として発足。1987年に勤怠管理システム「たんぽぽ」を開発、91年にテレタイムシステム1100の開発・販売を始めた。就業関連のシステム開発・販売は29年になる。現在は就業管理システム「クロノス」、ICカード式タイムレコーダー「テレタイムX」などが主力製品。導入実績は約5600社。最近、クラウド版を出し幅広い層への波及を狙う。