独自性豊かな「上流」を追求する
──それで御社にとって「上流」とはどんなものなのでしょうか。 「上流」といっても、業務改革や人事制度といった企業の主要機能の領域に進むべきなのか、国や役所の政策なのか、あるいは先述の脳科学のような先端分野なのか、それぞれあると思います。同業他社を見渡すと会計をベースに発展してきたところや、公共政策に強いシンクタンク的なところなどがありますが、当社が最も強みとするところは、やはり国や役所、研究者、産業界のギャップを埋めるポジションなんです。これがNTTデータグループの本業であるシステム構築(SI)に直接的に結びつくものではないのかもしれませんが、それでも「上流」を目指す過程であえて特徴づけをするとすれば、そうした領域を強みとしています。
私自身はNTTデータで公共分野の顧客を担当した期間が比較的長かったのですが、なかでも印象に残っているのがマイナンバー(社会保障・税番号)制度です。ご存じの通り、マイナンバーは役所の業務を効率化するためのもので、いわば役所のための制度。しかし、実際はマイナンバーを集めるのに民間企業の業務にも変更を加えなければならない。つまり、役所の動きが産業界にも広く影響を与えたケースなんですね。脳科学にしても、一部、医療に関わる部分は国の厳しい規制を受けますし、新しいことをやろうとすれば、所轄官庁の理解を得て、できれば協力してもらうよう働きかけていく必要がある。
──なるほど、確かにイノベーションを起こしていくにあたって、国や役所の理解を得ないよりも得たほうがいいですし、国が何かの政策を推し進めるときは、民間の理解がなければ頓挫しかねません。御社が目指す「上流」とはそれぞれのセクターのギャップを埋めて、相互に協力し合えるような関係を構築するのに役立ちそうですね。 顧客がコンサルティング会社に求めるのは「専門的な知見」であり、コンサルタントには顧客のニーズに応えるために業界や学界、役所などと太いパイプをもち、複数の専門性を組み合わせていく力量が求められます。そのうえでITの仕掛けも含めた緻密なロジックを構築します。また、そこには往々にして最先端の科学的要素も入れ込んでいく必要があります。
とはいえ、セクターが違えば、同じことを指していても使う用語が異なったり、行動原理も違ったりしますので、当社がうまく間に入って橋渡しをしながら、産学連携のイノベーションを国や役所に理解してもらい、できれば後押ししてもらうよう働きかけたり、また、国や役所の政策をうまく民間に浸透するよう動いたりします。こうした活動がイノベーションを促進させ、顧客のビジネスの成長につながる。そして結果的にNTTデータグループのSIビジネスが伸びれば、当社の「上流」戦略は成功したといえるのではないでしょうか。

‘国や役所、学界、産業界のそれぞれのセクターにギャップがある。これらを橋渡しすることが当社の目指す「上流」につながる’<“KEY PERSON”の愛用品>尊敬する先輩からもらった万年筆 今から10年ほど前、NTTデータ関西の社長に就くとき、尊敬する先輩から「お前ならできる」との言葉とともにもらったモンブランの万年筆がお気に入りだ。「私が万年筆好きなのを覚えていてくれたのもうれしかった」と話す。
眼光紙背 ~取材を終えて~
社会の仕組みは、基本的にそこに暮らす人々の幸福を追求するものであるべき。ただ、人々が幸福と感じるにはどうしたらいいのか。さらにどういった場面で人々は幸福を感じるのか。これを突き詰めていくと「脳が快適と感じるのはどうすべきかにたどり着く」(佐々木康志社長)と話す。
NTTデータ経営研究所は、応用脳科学コンソーシアムの運営を通じて、こうした知見を蓄積。いわゆるニューロマーケティングの手法で顧客のビジネスに役立てている。同コンソーシアムでは「ニューロFinTech研究会」の立ち上げも計画しているといい、脳の研究で得た知見をFinTechにも応用していく準備を進めている。また、AI領域のディープラーニングにおいても脳科学の活用が欠かせない。
同社が得意とする産学官連携の橋渡しのような上流工程にも、脳科学が応用されることを期待したい。(寶)
プロフィール
佐々木 康志
佐々木 康志(ささき やすし)
1955年、北海道生まれ。80年、北海道大学修士課程修了。同年、日本電信電話入社。92年、NTTデータ通信(現NTTデータ)公共システム事業本部担当部長。06年、NTTデータ関西社長。09年、NTTデータ執行役員第一公共システム事業本部長。11年、NTTデータカスタマサービス社長。14年、NTTデータ経営研究所社長就任。
会社紹介
NTTデータ経営研究所は、NTTデータが独立して間もない1991年に設立されたビジネス・コンサルティング会社。200人余りのコンサルタントを抱え、産業や金融、公共といった幅広い領域をカバーしている。