異業種をつなぐ“ハブ”になる
──新たに生まれ変わったフューチャーアーキテクトですが、どのような将来像を描いていますか。 われわれはこれまで、さまざまな業態のお客様とITの分野でおつき合いをしてきました。「経営とITをデザインする」というのが当社が掲げる一つの命題ですが、これは単なるITだけではなく、お客様の経営モデルも深く知り、ITのプロとしてどうやったらそれを実現できるのか、きちんと深く話をし、取り組んでいくということです。これについては、できていることとできていないことがありますが、常に努力しています。
そして今考えているのは、違う業種と業種を結びつける“ハブ”のような存在になるということです。
──具体的にはどういうことなのでしょうか。 一例として、われわれが提供するサービスで、複数のアパレルメーカーと小売業者をつなぐ、クラウド型のオムニチャネル戦略支援データ連携システム「OmnibusCore」があります。メーカーと小売店をつなぐ受発注のシステムは今、各社が個別につないでいるんですね。しかし、各小売店とアパレルメーカーが(OmnibusCoreに)つないでもらえば、一度接続するだけでどこの取引先とも連携できるようになる。各社間で商品の在庫情報を共有することができ、欠品の低減や販路の拡大が見込める。これは実際に動き始めていて、4か月ほどで2ケタを超えるお客様が集まりました。
この小売店とメーカーのように、業種を超えてわれわれがハブになることで、ビジネスモデルを合理化したり、標準化したりなど、いろいろな可能性が生まれます。個別の業種だけでは実現が難しいことはたくさんありますが、そこをわれわれがITを使ってハブになることで、先進的で合理的なビジネスモデルをデザインしたいと考えています。
──ITコンサルを生業とする、御社ならではの視点から生まれた考えという気がします。 だからこそ「経営とIT」なんです。そうしたことを実現するためには、ITだけ知っていてもダメ。お客様の経営、つまりは業務モデルを知っていないとダメなんです。だから社員には、「ITのプロであることはあたりまえ、お客様の業務のプロにもなりなさい」と言っています。そういう会社になれば、われわれがセールスをしなくても自ずと相談がくるでしょう。
幸いにも、各業界のキーになるお客様とのおつき合いはすでにあります。それぞれにあったアイデアや素材もあります。それらをつなぎ合わせると、当社の社員でもまだ気がついていないようなことがきっとたくさんある。そこから新しい価値を生む。そういうことを考えられるような会社になりたいですね。

われわれがITを使って異業種間のハブになることで、
先進的で合理的なビジネスモデルをデザインしたい
<“KEY PERSON”の愛用品>時計に世話は必要ない 10年以上愛用している腕時計タイプの電波時計。時間が狂わず、光発電のため手間がかからないところがお気に入り。新しいものも出てきているが「なんとなく気に入っていて、ずっと使っている」と、手放す気はないようだ。

眼光紙背 ~取材を終えて~
SIerとしてみれば、ITコンサルティング事業を中核とするフューチャーアーキテクトの立ち位置は異色。それとともに、子会社群の「リアルビジネス」も拡大し、グループ全体で手がける事業はまさに多彩だ。東社長は「M&Aも含めて、今後も拡大していくだろう」と話す。持株会社制へ移行したことで、グループ各社の役割を明確にし、新たなビジネスにも取り組みやすい体制に整えたかたちだ。
同社が目指す、業種と業種を結ぶ“ハブ”としての存在。確かに新たなビジネスモデルを生み出すためのアイデアは無数にあり、可能性は広がっていきそうだが、だからといって簡単につくり出せるものではないだろう。それでも、「考えれば思いつくことって、けっこういろいろあると思う。思考を止めないことが大事。少なくともわれわれはITコンサルタントといっている以上、思考を止めてはいけない」と東社長は釘をさす。
質問すると、とことん答えてくれる東社長をみていると、常に思考を止めず、語り尽きないほどの考えをもっていることがうかがい知れる。東社長に導かれる同社の今後が楽しみだ。(宙)
プロフィール
東 裕二
東 裕二(ひがし ゆうじ)
1955年1月生まれ。広島大学総合科学部卒業後、日本エヌ・シー・アール(現日本NCR)に入社。その後、日本ディジタルイクイップメント(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、98年に日本オラクルに入社。2005年には同社副社長に就任。09年にワイディシーで社長を務めたのち、10年、フューチャーアーキテクト(現:フューチャー)に入社。執行役員アドバンスドビジネス事業本部長、取締役副社長アドバンスドビジネス事業本部長などを歴任。15年、代表取締役社長に就任。16年4月より現職。フューチャー取締役副社長を兼任する。
会社紹介
1989年に「フューチャーシステムコンサルティング」として、フューチャーの代表取締役会長兼社長グループCEO、フューチャーアーキテクトの代表取締役会長を務める金丸恭文氏が鹿児島で創業。90年に本社を東京へ移す。2002年、東京証券取引所第1部に上場。07年にフューチャーシステムコンサルティングとウッドランドが経営統合し、社名を「フューチャーアーキテクト」に変更。16年4月に持株会社制に移行した。15年12月期の連結売上高は352億9300万円。グループの従業員数は1623人(15年12月末現在)。