FTが必要な場所はまだまだ増える
──より多くのところでFT製品が使われるようになったとのことですが、どのようにして用途を拡大していかれるのでしょうか。 従来ストラタスがフォーカスしていたのは、人命や社会インフラにかかわる「ミッションクリティカル」領域でしたが、最近それ以上に広げたいと考えているのは、私たちが「ビジネスクリティカル」と呼んでいる分野です。現代では基幹系システムだけでなく、例えばメールサーバーも、もし止まってしまったら業務に大変な影響を与えますよね。従来のミッションクリティカル領域ほどの要求はないものの、お客様が「止めたくない」と思われる範囲はどんどん広がっています。ですので、私たちの製品を販売できるチャンスはまだまだ拡大していると考えています。
──最近では、汎用のサーバー2台に入れることでFTシステムを構成できる「everRunソフトウェア」も提案されていますが、従来のハードウェア製品とはどのように売り分けていかれるのでしょうか。 いわゆるオンプレミスのシステムでは、引き続きハードウェアベースのFTサーバーがすぐれた製品だと考えています。一方、昨今話題になっているIoTでは「エッジコンピューティング」などといわれているように、サーバーを中央のデータセンターではなくセンサなどのデバイスに近いところに置き、大量のトランザクションを低遅延で処理する必要が指摘されています。そうなると用途に応じた多種・多数のサーバーが必要になりますが、このようなエリアでは、一度サーバーにインストールすればノンオペレーションで無停止、高可用性を実現できるソフトウェア製品が最適だと考えています。
──今後注力していく具体的な業界・業種について、何か戦略はおもちですか。 米国では最近、建物の入退管理システムの案件が伸びているようです。今年後半から来年にかけてのグローバル戦略領域は、一つは製造業、もう一つは電力・ガス・水道などの公共インフラ分野です。日本でも多くの重要なお客様がいらっしゃる領域ですので、全社の戦略となったことであらためて力を入れたいと考えています。一方、日本独自の戦略として考えているのは、いわゆるFinTechの一部になると思いますが、クレジットカード分野です。当社はクレジットカードのオーソリゼーション(信用照会)システムで大変高いシェアをいただいているのですが、いまカード業界では2020年の東京五輪に向けて、システム増強や新しいサービスを検討されているようです。ここで新たなビジネスを獲得したいと考えています。
全社で日本市場にコミットする
──ストラタステクノロジーのグローバルビジネスの中で、日本市場はどのような位置づけにあるのでしょうか。 実はストラタステクノロジーの世界の売り上げのうち、日本市場は約25%を占めています。しかし、米国と同じ事業だけをしていたらこのビジネスボリュームは実現できません。米国ではエンドユーザーの方がFTの仕組みをつくるのが上手で、できることは自分たちでやってコストを落とすといった考え方も強いですが、日本の場合、お客様は「止まらない仕組みそのものをもってきてほしい」と言われます。つまり、ハードが止まらなければいいのではなく、業務やサービスそのものが停止しないという環境をご提供するのが重要になります。ですので、システム構築や運用支援などのサービス部隊も、日本ストラタス独自の取り組みとして強化していますし、国内では当初からパートナービジネスにフォーカスしている点も強みになっています。お客様、パートナー様とも、非常に古くからのおつき合いが続いていることが多く、これは私たちの財産だと思っています。
──顧客やパートナーとの長期的な関係構築に成功した秘訣は何でしょうか。 ストラタスは、「止まってはいけない」というところからビジネスを始めましたので、現在でも世界のどこかで当社製品に何かの障害が発生した場合、本社のCEOまで報告が上がるようになっています。ですので、起きた問題に対しては日本法人はもちろん、必要であれば本社自ら原因の究明・解析にあたるよう常に考えています。どのメーカーも、製品が壊れたら交換はしてくれると思いますが、原因の究明まで一緒になってやるところはそんなに多くないのではないでしょうか。このような企業文化が、とくに日本のお客様やパートナー各社から高くご評価いただけているのではないかと考えています。

「止めたくない」領域はますます広がっている
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