桑野社長の原体験は、入社1年目の1976年、関西のあるスーパーの「買掛金の管理システム」の構築にあるという。仕入れ先から「請求書」がきて、手元にある発注書や納品書と照らし合わせた上で振り込みをする業務フローだが、まれに「請求書」が期日までにこないで、支払いが伸びるケースがあった。



　桑野氏は、「支払いが伸びることで得をした利子の概算」を出せる機能を提案し、管理システムに盛り込んだところ、顧客から「おまえ、若いのに経理に詳しいな」と、たいそう喜ばれたそうだ。「電算室の出入り業者から、ビジネスパートナーとしてみられた瞬間だった」と振り返る。



　大学では、物理工学の専攻で、経理はまったく門外漢。付け焼き刃で経理本を読みあさり、なんとか顧客の話についていく状態だっただけに「うれしかった」と話す。このことが、「お客さん、それは違いますよ」と提言できるSE像の原点になっている。（寶）