──どんなイノベーションに注目していますか。 たくさんあるのですが、直近では社会全体で効率的なエネルギー管理を可能にする実証実験「バーチャルパワープラント」に、IT系企業で当社が率先して参加しています。関西電力をはじめとした電力や、重電といった企業が中心となっているのですが、実はこうした異業種連携こそビジネスチャンスが眠っているのです。
もともと、電気自動車(EV)充電インフラシステムサービス「smart oasis」などでエネルギー分野には力を入れていますが、電気ってただ売るだけはありませんよね。会員特典をつけたり、ビルやマンション向けのエネルギー管理サービスを提供したりすると、当然のことながら決済インフラや顧客管理サービスが必要になります。電気自動車のカーシェアも同じで、「モノからコトへ」の大きな潮流のなかで、世の中がどんどんサービス化しているのです。サービス化は、すなわち継続課金モデルであり、そうしたモデルを支えるシステムやサービス基盤は、当社が得意としているところです。
──本格的にかたちになってくるのはいつ頃でしょうか。 まずは、今の3か年中期経営計画の2018年3月期までにビジネス・エコシステムの基盤をしっかり固めます。失敗を成功につなげる企業文化も、より一段と醸成させていきたい。そして、21年3月期までの次の中期経営計画では、このエコシステム基盤を中核として大きく成長させていきます。

私にとって失敗は「無駄」ではなく、むしろ「成功への指標」。失敗の経験は
無形資産として会社や社員、組織に残り、成功への道標になる。
<“KEY PERSON”の愛用品>妻から贈られた万年筆
執行役員に昇進した2002年に、妻から贈られたイタリアの万年筆「アウロラ」。ふだんはボールペンでこと足りるという平岡社長だが、じっくり何かを考え、将来の構想を紙に書き記すときは「妻からもらった万年筆じゃなきゃダメだ」と話す。
眼光紙背 ~取材を終えて~
ビジネス・エコシステムを掲げ、異業種や同業者を巻き込んだイノベーションを起こすと社内外にメッセージを発してきた平岡社長。その話をどこからか耳に入れたスタートアップ企業やベンチャーキャピタル(VC)、イノベーションの推進役を担うアクセラレーターから、「ことあるごとにお声がけをいただけるようになった」という。
IoT/ビッグデータやAI(人工知能)、FinTechを例にあげるまでもなく、新しい技術が次々と登場し、スタートアップ企業は斬新なアイデアを持ち寄ってくれる。
「私には、そうした新技術やアイデアの一つひとつが“きら星”にみえる」と平岡社長はいう。星と星をつなぎ合わせてストーリーやユーザー体験を創り出し、「まるで物語を雄弁に語る“星座”をかたちづくっていくように、ユーザーに新しい価値を届ける」と、目を輝かせながら話す。(寶)
プロフィール
平岡 昭良
平岡昭良(ひらおか あきよし)
1956年、石川県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。80年、日本ユニバック(現日本ユニシス)入社。2002年、ビジネスアグリゲーション事業部長。同年、執行役員。05年、取締役常務執行役員。11年、専務執行役員。16年4月1日、代表取締役社長に就任。
会社紹介
日本ユニシスの昨年度(2016年3月期)の連結売上高は前年度比3.3%増の2780億円、営業利益は同14.6%増の125億円。今年度(17年3月期は)の売上高は同2.5%増の2850億円、営業利益は同11.8%増の140億円を目指す。18年3月期までの中期経営計画では売上高3200億円を掲げており、20年度までの次の中期経営計画ではビジネス・エコシステムを軸とした新領域の比重を大幅に高めていく方針を示す。