米国視察ツアーで定点観測
──長きに渡り、会長を務めていますが、会長の発案で推進した事業には、どんなものがあるんですか。 私が会長に就任して実現したことが二つあります。一つは06年10月に再開した米国シリコンバレーへの「エグゼクティブ視察ツアー」、もう一つが「ITトレンドフォーラム」になります。父の時代(98年から01年に大塚商会の大塚実社長(当時)がJCSSAの会長を務めた)、01年9月11日に米国で同時多発テロが起き、ツアーは一旦中止していました。
市場環境が厳しい時に米国に視察ツアーをしている場合ではないとの声もありました。ただ、ツアーの1週間で同じ釜のメシを食べながらですと、ふだん以上にコミュニケーションができ、新しいことを知ることと合わせ、コアのメンバーが結束しながら知識を共有できる。私が会長に就任した年(06年)から再開したんです。
──JCSSAは今後も長く続くと思いますが、どのような協会にしていこうと考えていますか。 横のつながりが強く、いい関係が築けています。正月の賀詞交歓会に併設したセミナーでは、数年前に比べると多くの人が来てくれています。小さい協会でそれぞれが手弁当ですが、仲よく一生懸命やっています。委員会活動をしている会員企業は大変ですが、必ずメリットを感じていただけていると思いますし、加盟している価値があるでしょう。
売り物は変わり、JCSSAの会員企業がやるべきことは、少しずつ変化していきますが、大きく変わらない。中堅・中小企業のIT化を進め、日本をITで強くすることが基本であることに変わりありません。

販売店はエンドユーザーに近い立場にいるメリットをもっと大事にしたい。
求められるものは、技術力だったり、新しい知識だが、
これらがお客さんに先行している「プロ」でなければなりません。
<“KEY PERSON”の愛用品>つねに持ち歩く「3点セット」 TUMI(トゥミ)の折り畳み可能なトートバック、iPad、リコーのユニット交換式デジタルカメラ「GXR」。トートバックに入れて持ち歩く。大塚裕司会長曰く「3点セット」だ。カメラは趣味、iPadは趣味と仕事で使っている。

眼光紙背 ~取材を終えて~
一つの業界団体の代表を10年以上に渡り務めている人は、ほかに例がないだろう。大塚裕司会長は就任当初から、「ITで日本を元気にする」という方針からぶれたことがない。微妙に文言は変わってきているが、日本の企業、とくに中堅・中小企業のIT化の遅れが日本の発展を妨げているという危機感は強い。
年に何度も顔を合わせているが、顔色をひどく曇らせている時期があった。「リーマン・ショック」の時だ。成長し続ける大塚商会すら喘いでいた。IT業界全体を見渡すと、疲弊する同業他社の姿があり、苦しんでいたのだろう。だからこそ、JCSSA内での結束を強め、コンペチター同士、寄り添って乗り切ることを先導してきた。
あまりに有名だが、大塚会長はサンバが好きだ。サンバは、チーム全体で奏でる音と踊りが融合しなければ、軽快さが出ない。JCSSAは、社団法人化20周年を迎え、次の時代へと進んでいく。大塚会長がいつまで船頭を務め続けるのかはわからないが、この先も要職にあり指導をしてほしい。(吾)
プロフィール
大塚 裕司
大塚 裕司(おおつか ゆうじ)
1954年2月東京都生まれ、62歳。76年に立教大学経済学部を卒業後、横浜銀行に入行。80年にリコー、81年に大塚商会に入社。2001年8月から代表取締役社長。JCSSAでは95年に常任理事。02年には梅崎哲雄会長(当時:丸紅インフォテック社長)時に副会長。06年からは、社団法人化後で4代目となる会長に就任。過去最長の11年間、JCSSAの顔として大役を務めている。
会社紹介
日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は、1991年12月にITの販売を手がける販売店4社が発起人となり、会員15社で任意団体として発足。96年10月にカテナの小宮善繼社長が会長の際に社団法人として認可を得て活動を本格化。2011年4月には、公益法人改革法で非営利型一般社団法人に移行。16年10月で「社団法人化20周年」を迎えた。同年には、正会員、賛助会員を合わせ会員数が初めて200社を超えた。現在、企業向けにITを提供する販売店とITメーカーが参加しエンドユーザー目線で会員に役立つ活動や情報提供をしている。