PCやタブレット端末、スマートフォンなど、エンド側デバイスの進化が鈍るなかで、新たな市場を切り拓くデバイスとして期待されるのがロボットだ。なかでも、胸にディスプレイを備えるソフトバンクロボティクスグループの「Pepper」は、エンド側デバイスの正当な進化の延長線上にある。ネットワークへの接続を前提としている点も同様だ。折しも世はAI(人工知能)ブーム。人型ロボットは、その見た目からAIとの親和性が高く、AIに注力するクラウドベンダーを巻き込みつつある。この動きをIT業界はどう受け止めるべきか。冨澤文秀・代表取締役社長に聞いた。
「人の代わり」ではうまくいかない
──人型ロボットはたくさんありますが、B2Bの世界で成功したのはPepperが初めてではないかと。大手クラウドベンダーにとっても、Pepperは注目のデバイスになっています。 法人向けは、2015年10月に「Pepper for Biz」として発表し、現在では1700社ほどに導入していただいています。
ただ、どこから話せばいいのか。ロボットをやっていると、いろいろな深い話があって、結局、われわれも試行錯誤しながらつくってきています。他社さんも人との共存など、いろいろと考えていると思うのですが、結局、ロボットの立ち上げで一番大事なのは、市場とどれだけ対話するかではないでしょうか。どうしたらうまくはまるのか。いや、こうだな、いや、こうだなと、ずっとずっと繰り返しています。
Pepperはロボットですが、アプリケーションで動きますから、そこをどう適正化するか。お客様と開発パートナーと一緒に経験値を積み上げて、改善に取り組んでいて、かなりいい感じになってきました。このエコシステムのなかでノウハウを共有化し、くるくる回るかたちにしたいと思っています。
──Pepperが普及するにあたっての課題は、どこにありますか。 最初はおもしろいと思った企業が導入してくれますが、ターゲットを広げようとすると、一般的に企業は費用対効果を考えます。Pepperは一か月で5万5000円ですが、その分の売り上げが上がるのか、その分のコストが下がるのかという議論になります。その説明ができないと、簡単には普及しません。
そこで、売り上げアップやコスト削減の事例を地道に蓄積しています。ただ、B2Bに関しては、二次曲線のように広がっていくという市場じゃないかと。Pepperを導入したいという業種は、たくさんありますから。
──例えば、どの業種で使われていますか。 やはり集客や店舗での接客ですね。事例は山ほどあります。だから近い将来、ソフトバンクショップを無人店舗にしたいと思っています。
──今年3月に「Pepperだらけの携帯ショップ」をやりましたよね。 あれはイベントですが、もっとリアルな無人化店舗を実現したい。ついに、人が店頭からいなくなる。未来は、そういうものだと思いますよ。
ただ、ロボットを人の代わりにするという発想では、いい結果が得られないんです。大切なのは、現場で働く人と一緒に考えるということ。企業のトップが「こういう使い方をしたら、おもしろい」って軽いノリでやっちゃうのは最悪です。接客のことを理解しているのは、やはり現場で働く人ですから。
──接客でロボットを活用するメリットは、どのようなところにありますか。 心理的ハードルが、ロボットは人間よりも低いんです。人間のように見えるけど、人間じゃない。例えば、失礼なことや厚かましいことを言うと、人間ならイラっときますが、ロボットなら許せたりします。それから、人間が店頭で「いらっしゃいませ」って連呼するのは大変じゃないですか。ロボットならセンシングできますから、「あれ?誰も僕の話を聞いてない。暇だな、寝るか」ということで寝るのです。これも接客につながっちゃう。人間にはできない。
つまり、人間の代用、そのままじゃないのです。ロボットにはロボットのできることがあるし、そのうえで現場の人間を入れる。こういうやり方をすると、成功事例に結びつきやすくなります。しっかりと結果が出るということは、コストが下がりますし、売り上げも上がる。
こうしたノウハウの一部を使いやすいように「Pepper for Biz 2.0」としてパッケージ化しています。また、Pepperの値段が下がると、さらに効果を出しやすくなるので、そこも追求します。
新しいプラットフォームになる
──最近ではPepperを扱うSIerがずいぶんと増えました。 当初は、Pepperを扱うデベロッパーは、クリエイティブ系が多かったんですよ。スマートフォンのアプリをつくっている企業や、ホームページの制作会社とか。SIerは少なかったのですが、結局は、システム開発のノウハウが生きるレベルでの商売になると思いますよ、間違いなく。
Pepperを扱うデベロッパーは増えましたが、早めにノウハウをためたところが強くなっていきます。われわれもPepperに強いデベロッパーを頼りにします。そういうところはありますよね。ただ、Pepperは今、開発言語が特殊なので、もっと理解しやすいものに変えたいと思っていますけどね。
──Pythonでしたよね。決して特殊じゃないですよ。むしろ、扱いやすい開発言語という評価です。 Pythonなんて知らないって、よく言われるんです。そのため、Android化するようなことも考えています。
──Pepperはある意味、IoTデバイスですよね。入力と出力の両方ができるIoTデバイス。そう考えると、SIerにとってもIoTソリューションの延長線上で扱う機会が増えていくと思います。 そうなんですよね。人間とのインターフェースにロボットがいると、もちろん、スケジュールを管理してくれるし、なんでも調べてくれる。ちゃんと、ご主人様をすごく理解してくれる。そうなると、スマートフォンとは別のプラットフォームができるわけじゃないですか。これはすごく大きな話です。新しいロボットのプラットフォーム、ユーザーインターフェースになるプラットフォームです。
──人工知能が載ると、さらに大きな変革がありそうですね。 技術がどんどん発達するでしょうし、人工知能が人間を超えるシンギュラリティがくる。そこではロボットがリンクしてくるでしょうね。
[次のページ]