FCAは頑丈な穴太積みに似ている
──FCAは同業者団体ですので、いくら富士通系とはいえ基本的にはライバル関係。協業に限界はありませんか。
もちろん競争するところは、しっかり競争します。ですが、地域に根ざしたDCを運営し、地場の顧客に安心感、信頼感のあるサービスを提供していく点で協業できるところは決して少なくありません。もう一つ、経営委員会や技術委員会、ビジネス委員会などの各種委員会活動を通じて、新しいトレンドを共有していく役割もFCAは担っています。
各社それぞれ地域の基幹となる情報システムを運営していますが、その一方でAI(人工知能)やIoTといった新しい技術に対するニーズも高まっています。こうした新領域に対応できなければ、顧客は「じゃあ新しいベンダーを入れるか」ということになり、将来的にビジネスの軸足が新領域へ移っていく。「軒を貸して母屋を取られる」状態になることもあり得るのです。そうならないために富士通グループがもつ知見も採り入れつつ、会員同士がしっかり議論し、自社の価値向上に取り組んでいくことはとても意義があります。
──FCA会員各社の関係は、今後、どう発展させていくべきだとお考えですか。
昨年、FCA創立50周年を迎え、今は次の50年に向けて歩み始めたばかりです。私は、FCA会員同士の関係を、よく「穴太(あのう)積み」の石垣に例えています。穴太積みというのは、比叡山のふもと、日吉大社のある地域で発祥した石垣建築の技法で、現代のコンクリートよりも耐荷重が強いといわれています。その強さの秘訣は、大きな石と小さな石を巧みに組み合わせるところにあり、そこはFCAと似ていると、日頃から感じています。
つまり、大きな石が全国を三つに分けた災害応援のブロックで、小さな石が会員個社で、全体として非常に強固で安心感のあるサービスを顧客に提供できるイメージでしょうか。FCA会員会社の生い立ちはそれぞれ異なり、会社の規模も違い、ときにライバルであったりします。でも、穴太積みのように個々の石の大きさがバラバラで、すき間だらけでも、全体でみれば頑丈な石垣であり続けられるようにしたいですね。
穴太積みの強さの秘訣は、
大きな石と小さな石を巧みに組み合わせるところにあり、
そこはFCAと似ている。 <“KEY PERSON”の愛用品>朱印帳持参で神社仏閣めぐり 「せっかく神社仏閣を巡るなら御朱印のひとつでも」と購入した朱印帳とその巾着袋がお気に入り。山の上にある神社なら「ちょっとした森林浴」にもなるし、都内の七福神めぐりでは、道すがらお団子やおしるこを食べたりして楽しんでいるとのことだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
1980年代、ベストセラーとなった富士通オフコン「Kシリーズ」のSEだった浜野会長は、「80年代前半は、まだまだメインフレームが主流だった」と振り返る。メインフレームが象だとしたら、オフコンは蟻。穴太積みで例えれば大きな石と小石くらいの差があったが、中堅・中小企業や地域の支社支店の情報システムを支えたのは、紛れもなく浜野会長が担ったKシリーズだと自負している。
大企業の本社や国の基幹システムをメインフレームで処理し、中堅・中小企業や地域ではオフコンが活躍する。そんな組み合わせによって情報処理が普及促進される。FCAの活動でも、大小さまざまな規模の会員が、ほどよい距離感をもって連携することで、顧客によりよい情報サービスを提供できる。
「相互に依存するのではなく、競争するところはしっかり競争して、お互いに高め合えるのがFCAのよいところ」と話す。(寶)
プロフィール
浜野一典
(はまの かずのり)
1955年、埼玉県生まれ。79年3月、東京大学文学部を卒業。同年4月に富士通に入社。SEとしてシステム部門で約15年間経験を積み、94年6月から営業部門を約10年間、04年6月からマーケティング部門を7年間担当。11年5月にサービスビジネス本部長に就任。12年6月、富士通エフ・アイ・ピー代表取締役社長。15年6月、取締役会長。16年5月、FCA(富士通系情報処理サービス業グループ)会長に就任。
会社紹介
FCA(富士通系情報処理サービス業グループ)は、1966年にFACOM電子計算センター協議会の7社で発足。以降、会員会社を増やし現在は91社から構成される。経営課題についての勉強会や技術研修、災害時の相互応援などの活動に取り組んでいる。