NTTグループのディメンションデータジャパンは、南アフリカを中心にグローバルでITサービスを展開しているディメンショングループの日本法人。これまでは、ディメンションデータグループの既存の外資系顧客をメインとしてきたが、ネットワークとセキュリティ、コラボレーションの3点に注力領域を絞り込み、日本国内での新規案件を積極的につかみに行く。橋本晃秀社長は「ディメンションデータの存在感を日本の企業にもしっかり感じ取ってもらえるようにする」と意気込む。
日本のユーザーの役に立つ会社に
──ディメンションデータジャパンの社長に就いて1年がたちます。まずは簡単に振り返っていただけますか。
この会社で私がしたことはわりと簡単で、「日本のユーザーの役にもっと立とう」との方針を打ち出しました。
ディメンションデータはご存じの通り、南アフリカで創業した年商75億米ドル(約8250億円)のITマネージドサービス会社です。世界49か国に拠点を展開し、3万人の社員を抱えているグローバルITベンダーであるため、日本法人もグローバルの顧客サポート拠点の一つとの性格が強かったのですね。もちろんそれはそれでいいのですが、せっかくの日本法人ですので、「日本のユーザーにもっと役立つ会社」へと舵を切ったのが、ざっくりとしたこの1年の動きです。
──「日本のユーザーに役立つ」施策とは、もう少し具体的にお願いできますか。
ディメンションデータがグローバルで手がけているサービスを、基本的には日本法人でもすべてサポートしています。海外から日本に進出したユーザーが、出身国と同じサービス内容、サービスレベルを求めるのは当然のことです。ただ、じゃあ、日本の顧客に向けて、ディメンションデータジャパンが総花的なサービスを提案しても、「いえ、NTTデータに頼みますからけっこうです」「うちはNTTコミュニケーションズにお願いしていますから」となるわけです。そりゃ、150人ほどしかいない日本法人が、NTTデータやNTTコムなどの巨人に対抗できませんし、グループ内で競合しても意味ないですよね。
ですので、私は日本の顧客向けにはネットワークとセキュリティ、コラボレーションの3点に絞って、なおかつこれに“グローバル”のキーワードが絡むときは、受注獲得に向けて全力をあげることにしました。市場のニーズと当社の強みが合致するところに経営リソースを集中させたのです。
──成果はどうでしたか。
ありましたよ。1年前は日本法人の売り上げのうち外資系顧客が7割余りを占めていたのですが、直近では外資系およそ6割、国内ユーザー4割へと国内顧客からの受注が大きく伸びています。国内向けに販売するサービスを明確に絞り込んで、なおかつNTTグループであることが国内ユーザーに浸透した効果も大きかったですね。
当社の強みは、何といってもグローバルで均質的なサービスを提供できる規模と体制をもっていることです。経済のグローバル化が進むなか、より大きな成長を求めて日本から海外へ進出するユーザーが増えています。日本の顧客をターゲットとして捉える当社にとって、これは強力な追い風になっています。他の日系SIerをみても、当社規模でグローバルサポートをできる会社はそうそうありませんからね。大きなアドバンテージです。
大切なのは棲み分けよりクロスセル
──2010年にNTTグループに入ったディメンションデータですが、直近はどのような布陣になっているのでしょうか。
ディメンションデータは、NTT主要5子会社の一角を占めています。主要5子会社とは、当社、NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NTTドコモ、NTT東西地域会社で、このうち企業の大規模な基幹業務システム、いわゆるエンタープライズITの事業を幅広く手がけているは当社とNTTコム、NTTデータの3社。担当領域は大ざっぱに、当社がITマネージメントやネットワーク構築、通信キャリアであるNTTコムが回線やクラウドサービス、NTTデータは業務アプリケーションとなりますね。
──NTTデータとの棲み分けはわかりますが、NTTコムとは微妙にかぶってませんか。
まず、当社は通信回線をもっていませんので、その時点で競合しませんよね。ただデータセンターやクラウドのサービスは両社とも手がけていますので、現在、両社の類似サービスを統合・強化を進めているところです。具体的にはNTTコムの主力クラウドサービスの「Enterprise Cloud」を当社がNTTコムから仕入れて販売する商流をつくり、グループ横断でのサービス体制に努めています。
──各社の生い立ちや手持ちの商材の違いから、顧客層も自ずと違ってくるとの見方もありますが、そのあたりの営業面での調整はどうですか。
営業面で大切なのは、棲み分けよりも、むしろクロスセルなんですよ。もっている商材特性が異なれば顧客層も違いますので、それぞれの顧客に自分の商品を売り込んだり、連携して一つのプロジェクトを仕上げたりする活動は、近年、一段と活発化しています。
具体的には、当社がNTTデータやNTTコムと連携することで、各社単独では受注が難しかったような案件も獲れるようになってきている。直近の大型案件だけでも、欧州での英国財務省のクラウド移行、医療機関のITアウトソーシング、大手製造業のITマネジメントサービス、米州での米テキサス州交通局のクラウド移行、重工業メーカーのビジネスプラットフォーム構築、アジア太平洋ではオーストラリア・ビクトリア州交通局の交通系ICカードシステム開発・運用など多数あります。
NTT持株会社が集計しているクロスセルの累計受注額は、当社がNTTグループ入りした年度にあたる2011年3月期は6200万ドル(約68億円)に過ぎなかったのが、昨年度(17年3月期)は25億ドル(約2750億円)まで積み上がっています。当社とNTTデータ、NTTコムがそれぞれ海外進出を推進するのと並行して、クロスセルにも力を入れてきた成果です。
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