オープンソースソフトウェアを手掛けるホートンワークス。グローバルでは、2011年の設立以降、ソフトウェア企業として急成長中。英バークレイズの調査では、史上最速の4年で100万ドルの売り上げを達成した。国内市場には14年から参入し、順調に事業を拡大している。IoTなどを追い風に、今後は次世代データプラットフォームの領域で主導権の獲得を目指す考えだ。ホートンワークスジャパンの廣川裕司・執行役員社長に、今後の展開を聞いた。
例えるなら「百科事典」
──オープンソースには、以前から注目されていますが、どこに革新性があるとお考えですか。
いまや開発のイノベーションは、多くの場合がオープンソースで起こっているといっても過言ではありません。「オープンソースって何?」といわれた時、私は百科事典に例えるようにしています。昔は、それぞれの家に百科事典や辞書がありましたよね。しかし、今はどうでしょうか。ほとんどの家からなくなっているでしょう。代わりになったのが、ウィキペディアです。それと同様に、ソフトウェアの開発も、ウィキペディアになったのです。
──ウィキペディアというと、どのようなイメージでしょうか。
ウィキペディアは、みんなで知っていることをシェアするから、どんな百科事典よりも詳しく、深いものをつくれるようになりました。ソフトも同じなのです。昔は、頭のいい人が開発して、できあがったソフトはシェアしませんでした。ですから「いいものだから、1人2万円払え。メインフレームのソフトは2億円払え」となっていました。しかし、みんなで協力すれば、同じことができるという考えが生まれました。そして、みんなの知識や知恵を結集し、完成度を高めてきたソフトの代表例が「Linux」です。
──IT業界では、さまざまなことが時々刻々と変わっています。オープンソースの領域ではいかがでしょうか。
Linuxができあがる前は、「世界中の何千人、何万人の開発者がまとまって開発するなんて、できるわけがない」といわれていました。実際はどうでしょうか。現実としてできてしまったわけです。この仕組みから出てきた人が、ミドルウェアにいって、今はデータプラットフォームの領域に入ってきました。つまり、ソフトウェアのイノベーションは、オープンソースで起きているのです。現在のデータプラットフォームへの動きは、OS、ミドルウェアに続いて「第三の波」とみることができます。
エンジニアの質と数が強み
──日本法人の社長就任から半年となりました。グローバルも含めてホートンワークスの強みはどこにあるとお考えですか。
グローバルで考えると、エンジニアの質と数が圧倒的に違うことが当社の強みだと考えています。例えばApache Hadoopでは、バージョン管理ができる開発者にあたるコミッターは全世界で120人いて、全体の約30%を占めています。1200人しかいない会社としてコミッターの人数を考えると、どれだけ多いかわかってもらえると思います。つまり、ホートンワークスはイノベーションを起こせる「ザ・エンジニアリング・カンパニー」なのです。
──世界的に急成長をしていますが、これまでの歩みについて教えてください。
ホートンワークスは、ヤフーのApache Hadoopオリジナルチームのメンバー24人によって11年に発足しました。そして15年にグローバルの売り上げが100万ドルを超え、英バークレイズの調査では、ソフトウェア企業では、今までにない成長速度を記録しました。現在も着実に成長しており、今年の売り上げは確実に250ミリオンドルに届く見通しです。
──市場での評価については、どのように受け止めていますか。
米フォレスターの調査結果では、ホートンワークスは、世界のビッグデータウェアハウスで、世界的に有名な大手企業と並んで、初めてリーダーのポジションに選ばれました。標準のオープンソースデータプラットフォーム=ホートンワークスとして、徐々に世界的に認識されるようになってきたと思っています。
──日本法人について、少し説明いただけますか。
日本法人は14年に設立しました。社員数は17年7月現在で20人弱です。まだまだ企業の規模としては小さいので、何でも自分でやらないといけません。ですから、毎日、ものすごく忙しいですよ。
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