コールセンターは今後も存続できるか
──コールセンター市場では、競合のジェネシスがクラウドに強いインタラクティブ・インテリジェンスを一昨年買収し、最近ではAWSの「Amazon Connect」の印象も強いです。クラウドへの対応ではアバイアが追う立場になっているということはありませんか。
確かに、クラウド型コールセンターの市場では今名前を挙げられたようなベンダーの存在感がありますが、私どもは今のところ、自社が前面に立つのではなく、基盤を提供しているパートナー各社を通じてクラウド型のサービスを展開しています。実際に日本国内でクラウド型ソリューションを導入しているコールセンターについては、席数で数えるとアバイアをベースとしたものが断トツで多いと考えています。コールセンターのシステムは、需要の増減に対応できることが求められますので、オンプレミスとクラウドのハイブリッド型でないと導入できないというお客様も非常に多いです。
──さまざまな企業がビジネスを販売型からサービス型へとシフトするなか、コールセンターの需要は拡大するといわれてきましたが、その傾向は今も続いていますか。
コールセンターの需要は間違いなく増え続けています。その一方で、大きくいうと「日本社会においてコールセンターという職場が存続できるのか」という視点ももっています。というのは、コールセンターを運用されている方にとって今最大の課題が、人材不足だからです。新人オペレータ1人が現場に出るまでの、採用やトレーニングにかかるコストはどんどん上がっているのに、職場に長く定着してもらうのも難しい。この問題に対して、当社はITで解決策を提供したいと考えています。例えば、会話の内容や過去の対応履歴を自動的に分析し、最適な情報を表示できれば、お客様の問い合わせに対してすばやく的確な対応を行えるようになるので、オペレータの方にも快適に働いていただけます。ただ、これは当社の製品だけで実現できるものではなく、例えば日本語音声を認識するAIなどと連携する必要があります。アバイアの基盤自体をオープン化し、他のさまざまな技術との接続性を担保することが重要だと考えています。
新しいことのできないPBXの更新を今後も続けるのか。
競争力を高めたい企業からは、アバイアの技術が選ばれる。
<“KEY PERSON”の愛用品>思考のカラーは4色
ここ20年以上、メモを取るときは黒/赤/青/緑の4色ボールペンを使い続けている。最重要事項を赤で書くこと以外、色の使い方はとくに決めていないが、3色のペンでは足りないのだという。情報を色分けしながら整理することが、思考の深化につながるのかもしれない。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「昔、家の電話に母親が出ると、“よそ行き”のちょっと高い声で話すのが変な感じでしたよね。でも、子どもはあれを横で聞いていたから、電話での知らない人との話し方を覚えたんです」
和智社長からこう聞いて、茶の間の黒電話を思い出した。しかしメールやチャットで連絡がすむこの時代、家族や親しい友人以外と電話で話す機会がない若者も多いという。コールセンターに人が集まらないのも無理はない。
オフィスでも、電話のもつ性格は大きく変化した。昔ながらの内線取り次ぎで、電話が鳴っても取るのは下っ端ばかりという職場がある一方、スマートフォンアプリで重役に直接連絡できる企業もある。
コミュニケーションはテクノロジーによって進化すると同時に、ユーザーの文化も反映していく。日本の文化にフィットしたソリューションをつくり出せるかが、国内事業拡大の成否を左右するだろう。(螺)
プロフィール
和智英樹
(わち ひでき)
1961年広島県生まれ。83年、東京大学法学部卒。国際電信電話(現KDDI)で14年務め、うち3年は米ワシントンでインテルサットへ出向。その後SAP、ドイツテレコム、イントラネッツを経て、2001年にニュアンス・コミュニケーションズ、05年にウィットネス・システムズ、07年にライトスケープ・テクノロジーズ、08年にジェネシス、14年にテルストラの各日本法人代表を歴任する。16年4月より現職。
会社紹介
2000年、米ルーセント・テクノロジーからのスピンオフで設立(日本法人も同年設立)。コールセンターソリューション、企業向けIPテレフォニー大手。17年1月、債務構造の改善を目的にチャプター11を申請。同年、ネットワーク部門を米エクストリーム・ネットワークスに売却し、12月にチャプター11から脱却。18年1月にはニューヨーク証券取引所に再上場した。