日本はあたりまえ、次はアジアへ
──BtoB領域は御社の独壇場だと。
間違いなく、われわれは日本で覇権を握れる。はっきり言って、日本はあたりまえです。その次は、アジア圏を狙おうとしていて、すでに中国とタイに進出しています。アジアを制覇した暁には、米国でも戦いたい。この三段階を考えています。そして、そこでの競争相手はGAFAではなく、現地の音声認識やAI企業です。
タイでは、現地のTrueグループと合弁を組んで事業を展開しています。この市場には、われわれと同じ異言語から進出してきたニュアンスという競争相手もいます。しかし、彼らにもすでに勝っています。日本語で培ったある部分を組み込んで、タイで提供する音声認識のエンジン性能を向上させたことが主な要因です。
──「BSR3×3」の最終目標は何でしょうか。
2段階目の3年間では売上高110億円、営業利益30億円、最終段階では売上高220億円、営業利益70億円が目標です。海外からの収益は、その20~30%くらいを占める見込みです。
従来からやってきた医療やVoXT(文字起こし)、コールセンター、クラウドの事業は、この4年間ほど増収増益で伸びています。新しい事業領域も加わって、今は10のプロフィットセンターがありますが、その一つである土木・建築業界でも市場ができつつある。18年3月期は海外だけが減収でしたが、状況は変わってきた。ですから、今後はめでたくすべての事業で増収増益を遂げていきます。
世界最高の技術をつくり上げていて、自信があります。
はっきり言って、GAFAより優れています。
だから、彼らは日本市場で勝つことはできません。
<“KEY PERSON”の愛用品>サイズとスマートの両立
ビジネスバッグで重視しているのはサイズとスマートさの両立。これまで使用したものは「最初はよい形でも、どんどん不細工になっていった」というが、今回は1年経っても型崩れしない。「PCがすっきりと収納できて、見た目もスマート。こんなバッグは昔はなかった」と気に入っている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「20年間ずっとやり続けて、やっと音声認識の時代がきたといわれる状況になった」。終始自信をみせていた鈴木会長だが、この言葉には苦労が滲んでいた。
会社の設立当初、音声認識の市場は存在していなかった。世界最高の技術をつくることが、市場をつくる必要十分条件だと考えたが、結果は追いつかず。「単なる一つの必要条件でしかなかった」と振り返る。市場に投入するには早すぎた一面もある。
赤字覚悟で必要条件を探し、満たしていくには時間もコストもかかる。資本金が50億円弱と大きいのはそのため。「外にいる人からしたら、順風満帆にお金を集めてやってきたように見えるかもしれないが、本当は大変な思いをしてここまできた」。
20年の苦労は、自信の裏づけにほかならない。必要条件は揃い、市場は開花しつつある。積年の思いを引っ提げ、世界最高と謳う技術を広められるか、今後の動向に注目したい。(道)
プロフィール
鈴木清幸
(すずき きよゆき)
1952年、愛知県生まれ。78年、京都大学大学院工学研究科化学工学専攻博士課程を2年次中退し、東洋エンジニアリングに入社。86年、インテリジェントテクノロジーに入社。その後、米国カーネギーグループ主催の知識工学エンジニア養成プログラム(KECP)を修了。89年には同社研究開発部長を経て常務取締役に就任。97年、アドバンスト・メディアを設立し、代表取締役社長に就任。2010年、同社代表取締役会長兼社長に就任。
会社紹介
1997年12月に設立。自社開発の音声認識エンジン「AmiVoice」や対話型音声AI「AmiAgent」を医療、コールセンター、製造、教育などの業界に展開している。従業員数は181人(18年3月時点)。2005年に東証マザーズに上場し、18年3月期業績は売上高が36億8300万円、営業利益が6億4700万円、経常利益が6億1000万円、純利益が5億200万円と過去最高を記録。調査会社ITRによれば、国内音声認識市場の17年度ベンダー別売上金額シェアでは64.6%で、3年連続のシェア1位を獲得している。