上位システム連携でパートナー拡大
──パートナー戦略についてお聞きします。国内と海外、それぞれどのような戦略をおもちでしょうか。
地域やエリアではなく、業種でパートナーシップを考えています。業種別にアライアンスパートナーを開拓し、当社がもっている武器を価値として感じてくれるパートナーと提携していきます。地域別に展開していない、と申しましたが、ソリューションビジネスは日本市場が進んでいるため、どうしても日本のパートナーが多くなっています。
──昨年あたりから製造、物流の分野でパートナー連携が増えていますね。パートナー拡大への取り組みを聞かせてください。
製造、物流に加えて、医療分野でもパートナーは増えています。これまで20年ほど、現場に近いところのソリューションを提供してきました。例えば、医療では、誰がどの患者に何の薬を投与したかなどの情報をバーコードで管理するソリューションを提供しました。つまり、1業務のソリューションだったわけです。
ここ4~5年で、全体の入り口から出口までを俯瞰するソリューションを提供できるようになり、例えば医療システムのような上位ソリューションとデータのやり取りをすることが非常に増えました。私たちのソリューションでデジタル化したデータを上位のソリューションに届ける、そして双方でデータをうまく活用することで価値を生み出し、その価値が上位ソリューションを提供しているベンダーにとっても価値になる。こうした構図で、大手のソリューションベンダーとアライアンスパートナーを結べるようになりました。
タギングなど現場に近いところでやってきた私たちが、少しずつ上位に上がってきたことでパートナーシップを結べる会社がどんどん増えています。このパートナー連携も成長戦略として大きな期待を寄せています。
消費者の購買意欲を高め、店舗やブランドの収益に貢献できる、
三方よしの関係になります。
<“KEY PERSON”の愛用品>提案の糸口をメモするアイデア帳
気がついたことやアイデアを書きとめるのは、営業時代から10年続く習慣だ。顧客との会話で出てきたキーワードを書き込み、提案の糸口としたのがきっかけだ。今は会話内容、本や記事を読んで気づいたことを記している。社長に就任した4月に、11冊目となるノートをおろした。
眼光紙背 ~取材を終えて~
小瀧社長に目標とする経営者像について聞いたところ、「成果を出す経営者」とシンプルな答えが返ってきた。時代によって会社に求められる経営者像は変わる。それでも必要なことは成果を出すことだという。成果を出せる経営者になるために、参考になるものはどんどんと取り入れ、自分なりに噛み砕いて吸収している。
小瀧社長にとって一番身近で、そして一番参考にしているのが社員からの声だ。サトーホールディングスには「三行提報」という文化がある。社員が現場でキャッチした情報、会社をよくするためのアイデアを三行、127文字にまとめて毎日社長に報告する。これにより経営者はいち早く社内外の環境を把握し、必要な対策を講じることができる。小瀧社長もこれまで30年近く一社員として、三行提報を書き続けてきた。書く側から読む側に代わり、こうした社員からの報告がとても貴重であることを改めて感じたという。全社員の声が、小瀧社長の大きな指針になる。(海)
プロフィール
小瀧 龍太郎
(こたき りゅうたろう)
1964年、東京生まれ。85年に片柳学園日本工学院専門学校 情報処理科を卒業。88年2月にサトー(現サトーホールディングス)に入社。2007年7月に執行役員兼営業本部プリンタ推進部長に就任。その後、12年4月に執行役員、13年4月に常務執行役員、14年7月専務執行役員、16年4月執行役員副社長兼最高執行責任者、16年6月代表取締役執行役員副社長兼最高執行責任者に就任。18年4月に代表取締役執行役員社長兼最高経営責任者に就任する。サトーの代表取締役社長も兼任する。
会社紹介
1940年創業、51年設立のサトーホールディングスは、62年に商品に値札をつける「ハンドラベラー」を世界で初めて発明した。以来、モノに情報をつける「情物一致」をコンセプトに、81年には世界初の熱転写方式バーコードプリンターを開発。90年代には主力事業を製品の開発・販売からソフトウェアや保守サービス、他社のハードウェアなどと組み合わせるソリューション事業へ大きく舵を切った。現在は、バーコードやICタグなどの自動認識技術を活用した自動認識ソリューション事業を強化している。90か国で製品を販売し、海外に25の拠点をもつ。従業員数は国内が約2000人、海外が約3000人の計5000人。グローバルの売上高は1000億円強。