販売、開発のパートナーは100社超に
――現場の裁量に任せてRPAを導入していくと、ソフトウェア・ロボットが無尽蔵に増えてしまう問題も指摘されています。
UiPathはロボットを監視して、全体の稼働率を把握するサーバー側の仕組みも充実しています。稼働率が極端に低いのも経済性からみて問題ですし、何らかのシステム変更がかかったときに、ロボットが対応できなくて止まってしまっているかもしれません。また、本来は稼働していない時間帯に何らかの操作をロボットが勝手にやってしまうのも問題です。当社のユーザー企業の中には、すでに1000台余りのロボットを使っているケースもありますので、ロボット全体を管理する仕組みは不可欠。ロボットの稼働状態や稼働率を監視し、最適化していく機能の拡充にも積極的に取り組んでいます。
――日本法人のビジネスが軌道に乗ったのは、販売パートナーの力量によるところが大きいと思います。こうしたビジネスパートナーについてもお話いただけますか。
国内販売パートナーは50社を超えました。この10月には技術的なサポートや開発を支援する開発パートナーや、操作に習熟してもらうためのトレーニングパートナーなど各種パートナープログラムも拡充。販売パートナーと合わせれば、すでに100社を超える規模となりました。国内納入社数も17年6月時点ではわずか6社に過ぎなかったのが、直近では600社を超えるまでユーザー数を増やすことができました。
業務へのこだわりと、高い品質要求、エンドユーザー思いの日本企業の特性と、近年のデジタル化による「多品種少量生産」の現象が業種を問わず起こっていること。これによって、業務のラストワンマイルの課題が顕在化する中、UiPathはRPAの技術を使って課題解決に全力で取り組んでいる。そうした姿勢をビジネスパートナーから評価してもらっています。課題を解決してユーザー企業が喜べば、パートナーも「もっと売ろう」と積極的になってくれる。そうした好循環をより一層作っていくことで販売増につなげていきます。
Favorite Goods
秘湯巡りのパンフレット。加水・加温せず、自噴したそのままの源泉を楽しむ。直近10年で「約200カ所の秘湯を巡った」。山の奥深くに分け入り、その土地の地酒をたしなみながら、夜は野湯から星空を見上げるのが「最高の贅沢」だと話す。
眼光紙背 ~取材を終えて~
成長市場で会社も個人もともに成長する
会社の成長を考えたとき、顧客はもちろん大切だが、「従業員やビジネスパートナーも同じように重要だ」と話す。「会社の業績と従業員個々人の業績は相関関係がある」とみているからだ。
業務自動化ソフトの国内RPA市場は、向こう5年で5倍以上に伸びることが見込まれている。「辛酸をなめながら逆境から這い上がったときの達成感もいいが、順風満帆の事業環境の中で勢いよく伸びていくのもいい」。RPAはまさに後者だ。
顧客の旺盛な需要に応えていくことで顧客も喜ぶし、販売や開発を担うビジネスパートナーも積極的に取り扱ってくれる。会社の業績がいいと、個人の業績も伸びる。大きく成長している市場に起こりやすい現象だ。
会社や個人の業績は、市場のマクロな動きに必ず影響される。例えば「ITコンサルティングは、ここ20年で大きく伸びた」。個々人で見ても成功を収めたITコンサルタントは多い。がむしゃらにがんばるなら、成長市場でがんばったほうが成功する可能性が高まる。「成功を収めて、みんなが幸せになることが理想だ」と話す。
プロフィール
長谷川康一
(はせがわ こういち)
1960年、広島県生まれ。83年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。同年、アーサー・アンダーセン(現アクセンチュア)入社。93年、ゴールドマン・サックス入社。ニューヨーク、香港、ロンドン勤務。2000年、ドイツ銀行入社。日本グループCIO。アジアパシフィック証券部門CIO。05年、バークレイズ銀行入社。アジアパシフィックCIO。17年2月、UiPath日本法人の代表取締役CEOに就任。
会社紹介
UiPathはルーマニアのブカレストで2005年に創業。その後、米国に拠点を移した。日本法人は17年2月に設立。業務自動化ソフトのRPAを主力製品とする。17年6月時点の国内納入社数はわずか6社だったが、18年11月には600社余りへと急増させた。世界での納入社数が1800社規模なのに比べて国内販売の好調ぶりが際立つ。