主要子会社の統合も視野
――グループ内の舵取りでも大きな変化がありましたね。主要子会社である富士通研究所、富士通マーケティング、富士通エフ・アイ・ピー、富士通ネットワークソリューションズは1月1日付で社長が交代しました。時期も異例ですし、全新社長が本社の役員を兼務しています。研究所は別ですが、ほかの3社はこれも異例です。狙いはなんでしょうか。
グループ会社がプライドを持ってそれぞれの特徴を出しながら、多彩な考え方で市場にアプローチしていくのがいい時期もあったのは間違いないんです。それが実際に日本市場ではお客様からも受け入れられてきました。ただ、これは富士通グループがあらゆるものを自社で用意して、きめ細かくお客様の要望に応えていく垂直統合のビジネスモデルが成立していればこそ有効だったわけです。先ほどクラウドの話も出ましたが、自らはテクノロジーソリューションに経営資源をフォーカスし、当社にはない強みをもつ企業と組んでいくCo-creation(共創)を目指すのが現在の富士通の方向性ですから、そのためにはグループが持っているリソースを分散するのではなく、もっとシンプルに再統合・整理して、われわれ自身の強みをよりはっきりさせる必要があるということです。
――ということは、主要子会社の吸収・統合という可能性もありますか。
グループ会社のトップに任命されると、どうしても自分の会社の組織を中心に考えてしまうんですね。本社の事業に責任を持っている役員がグループ会社のトップを兼務することで、各社の事業を全社視点で見ることができるようになると期待しています。場合によっては本体に統合というかたちも考えられると思いますが、スピード感を持ってグループ全体のリソースを整理して、あるべき姿に変えていきます。
Favorite Goods
米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOから誕生日プレゼントとして贈られたペーパーウェイト。17年、18年と田中社長は2年連続で自らの誕生日にシアトルの米マイクロソフト本社を訪れている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
迎えた正念場に強い危機感が滲む
就任当初からの朴訥とした語り口に変化はないが、富士通の現状に対する強い危機感を隠さない。就任直後から掲げてきた、在任期間中の営業利益率10%以上の達成という目標を撤回せざるを得なくなったことを考えれば、無理もない。新たに設定した、テクノロジーソリューション事業の営業利益率を2022年までに10%に上げるという目標にしても、18年度計画が4%、19年度計画でも5%というレベルであり、簡単に達成できる目標とは思えない。クラウドビジネスにおける一種の割り切りとも言える方針転換や、近年進めてきたSE子会社統合、コモディティー事業売却にとどまらないグループ再編への言及には、リアリストとしての感覚と新目標を何としても達成しなければならないという決意が覗く。
間接部門を中心に5000人規模の人員を営業やSE、コンサルに配置転換する方針も示している。「社員にはチャンスだと言っている。自分の枠を規定してしまわないで、個人個人がプロとして活躍のステージを上げて生き生き働いてもらうことが、富士通を強くするはず」という自らの言葉を現実にできるか。
プロフィール
田中達也
(たなか たつや)
1956年生まれ。東京理科大学理工学部卒業後、80年4月に富士通に入社。国内営業部門で大手鉄鋼、石油、化学分野などを担当。2000年4月、産業営業本部産業第二統括営業部プロセス産業第二営業部長。03年4月より、富士通(上海)有限公司に。09年12月、富士通産業ビジネス本部長代理(グローバルビジネス担当)就任。執行役員兼産業ビジネス本部長、執行役員常務兼Asiaリージョン長を経て、15年6月より現職。
会社紹介
日本を代表する総合ICTベンダー。2017年度(18年3月期)の業績は、売上高が前年度比0.8%減の4兆983億円、営業利益は同55.4%増の1824億円(ただし、事業売却などの特殊要因を除く本業ベースでは1296億円)。18年10月の18年度上期の決算説明会では、田中社長がかねてから掲げてきた在任期間中の営業利益率10%以上、海外売上比率50%以上」という目標を撤回し、テクノロジーソリューション事業に限定して、営業利益率を2022年までに10%に乗せるという新たな目標を掲げた。