近年、半導体メーカー再編の波を受けて、半導体商社にも合従連衡の動きが出始めた。特に2018年9月は、加賀電子による富士通エレクトロニクスの買収や、UKCホールディングスとバイテックホールディングスの経営統合と、大規模な再編が相次いだ。この時代の変革期において、菱洋エレクトロは18年4月に新社長として中村守孝氏を迎えている。大手百貨店の三越伊勢丹ホールディングスで長年コーポレート部門を見てきた中村社長は、半導体業界が迎えるターニングポイントで何を考え、どこを目指すのか。そのビジョンを聞いた。
「外の血」が新たな収益構造を創る
――前職は百貨店におられたとのことですが、半導体と百貨店では大きな違いがあるように感じます。入社されたきっかけをうかがえますか。
一見、意外な選択に映るかもしれませんが、私の経歴を見れば納得していただけると思います。もともと私は婦人服のバイヤーを目指して百貨店に入社したのですが、自分の志とは逆に、入社後のキャリアは経営企画、人事といったコーポレート的な領域に進んできました。その後、マーケティングやITシステムの管理など、社内で大きな企画が立ち上がると、そこにアサインされていたのです。そういう意味では、百貨店の中で特殊なキャリアだったのではないでしょうか。そして最後は、情報機器本部という社内ITを管理する立場にいました。
百貨店を退職してからは、いろいろなお話しがありましたが、菱洋エレクトロを選びました。現会長(小川贒八郎氏)たってのお願いだったことが大きいですね。おそらく、従来の収益構造を変えるためには一度、菱洋エレクトロ以外の血を引き込まないといけないという思いがあったのでしょう。そういう意味では百貨店に勤めていたからというのは、あまり関係がなかったかもしれません。
ですが、もし私が先ほど言ったユニークな経歴を持っていなかったら声はかからなかったように思います。経営を見つつも、まがりなりにもITを管理していた立場だったからこそのお声がけだと思っています。
――社長に就任したとき、菱洋エレクトロという会社についてどうお考えになりましたか。
非常にもったいない、というのが正直なところでした。当社が持つアセットはかなり充実していると感じています。豊富な仕入れ先やお客様があって、多くの社員が働いています。エレクトロニクス業界は好調が続いていて、まさにこれ以上ないチャンスだったわけですが、それにもかかわらず、昨年の当社の決算は減収減益でした。マーケットが良く、アセットもあり、同業他社が利益を出す中で、私たちは伸びを享受できていなかったのです。
――原因はどこにあったと考えられますか。
まず、内部の体制が整っていなかったことですね。私が菱洋エレクトロに入社した当時、社内の管理に注力しがちで、従来とは違ったビジネスモデルを作るには向かない状態でした。あまり過度に管理を強めると、結果的にお客様と関係のない部分に対して多くの時間を費やすことになってしまい、その状態では顧客に対して新たなサービスを提供することはできないと、私は考えています。
そのため、社長に就任してまず最初に手を付けたのは社内風土の見直しです。幸い、グローバルで600人近くの規模ですから社員一人一人と直接会話することができます。中間層を尊重しつつも、彼らでは伝えきれないところを私が直接語りかけることで、会社の方向性を共有しています。そこから徐々に権限を委譲していき、自由闊達でチームとしてまとまって一つの方向へと進める環境を構築してきました。
また、自社の持つ力と、市況をしっかりと分析できていなかったことも大きな原因だったと考えています。それらが把握できていないままで、ニーズに合った提案はできません。現在の定量的な分析も私が真っ先に取り組んだことの一つです。具体的には、ビジネスユニット制を取り入れ、商品とお客様の距離をできるだけ縮めました。これにより、さまざまな視点から売り上げを分析できるようになり、それに対するリソースの配分もはっきりしたのです。
その結果、多くのことが見えてきました。これまで私たちは、あまり売り上げが期待できないところにリソースを割いていたり、逆にもっと深掘りすればマーケットを開拓できたかもしれない領域に、適切なリソースを置いていなかったりとアンバランスな状態でした。現在はこれらを是正し、既存の提案にプラスアルファの提案ができるようになっています。こうした改善を推し進めたことから、18年第3四半期は増収増益につなげることができています。攻めどころにメリハリがついてきた証拠だと考えています。
エンドユーザーまで考えた提案
――攻めどころについて、特に重視されていることはありますか?
やはり、モノに限らないサービスへの転換は待ったなしの段階になってくるでしょう。私たちは、IoT、AIに取り組んできました。18年第3四半期では、このセグメントは堅調に推移しています。ここで私が意識しているのはエンドユーザーの視点です。B2Bの仕事において、お客様のその先にいるエンドユーザーがどんな用途でサービスを使うのかを考えなければ、このビジネスはできません。IoTなどは技術先行で導入を検討した結果、PoCにすら届かなかったという例はたくさんあります。クライアントや顧客について考えるのは重要ですが、その向こう側にいるエンドユーザーまで考えるとビジネスはだいぶ変わってきます。今後はそのエンドユーザーが真に求める価値やソリューションを提供していくことを前提に、デバイスにサービスを組み合わせて提供していきます。
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