「Only RYOYO」を広いマーケットに
――今後の方針として何を目標とされていますか。
私は将来、半導体業界にはさらなる再編が到来するのではないかと考えています。その来たるべき再編の中で、統合されるにせよ、買収するにせよ、しっかりと存在感を示すことができる筋肉質な企業体制を作り上げることが、当面の目標になります。
そのために私たちがやるべきは、商社としての機能を再構築することです。先ほども申し上げましたが、これまでの販売体制や社内風土を見直すことで、新たな価値創造に向けた地盤を整えてきました。IoTやAIビジネスにおいて、その土台となる企業の体制そのものが液状化していたら、持続可能な成長は望めません。これらについては現在最終段階に到達していると言えます。
そして、次のステップはすでに明確になっています。それは、私たちにしか提供できないユニークな価値、「Only RYOYO」を創出することです。モノに対して新たな価値をつけていく上で、自分たちにしか提供できないサービスは大きな競争力を発揮します。半導体以外の可能性も含めて総合的な提案を行っていくためにも、押さえておかなくてはいけません。
達成するにはいくつか方法が考えられますが、現在取り組んでいるのが研究開発への投資です。技術本部を設置し、ここに積極的な投資を行い、特許が取れるテクノロジーの開発を目指します。すでに一定の進展が確認できていて、最終的には菱洋エレクトロの知財となる確固たるものを作っていきます。そのほか、M&Aなどについても検討しており、あらゆる方向から技術の内製化を目指します。内製化は当社にとって必須だと考えての取り組みで、私の夢でもあります。積極的に注力していきたい分野ですね。
――新たな価値を作ったとして、その価値を提供していくターゲットはこれまでと変わらないのでしょうか。
マーケットを広げる必要はあると考えています。その代表が海外拠点の増設です。これまではタイやシンガポールを中心としたASEAN地域、中国、台湾といった国・地域に拠点を広げてきました。ここに関しては、引き続き投資を行っていきます。さらに、現在考えているのは欧米への進出です。すでにドイツのミュンヘンに拠点を立ち上げる予定で、今後はさらに広げていきたいと思っています。
Favorite Goods
社長就任後、日本国内の拠点長一同から、今後のビジネスへの期待の表れとして贈られたライター。菱洋エレクトロの行動指針である「VALUE and PRIDE」の文字が刻印されており、大切な宝物の一つだと言う。
眼光紙背 ~取材を終えて~
VALUE and PRIDEで突き進む
顧客にサービスを提供するときは、まず相手のことを考える。当然のことのように思えるが、法人向けIT市場では技術が先行することで、忘れられてしまう場合がある。結果として、満足のいく効果を得られず、本格的な導入に至らない。
一般的な店舗と比較して高度な接客が求められる百貨店で、中村社長は顧客第一主義を貫いてきた。「まずお客様が求めるものを考えなくちゃいけない。お客様と関係のないところに、たくさんの時間を割いていてはダメになる」と語る一言一言には一切の妥協がなく、顧客視点のサービスを追求する厳しさと菱洋エレクトロという企業を任された使命感を感じ取ることができる。
一方で、中村社長は自社の社員に対して非常に熱い感情をあらわにする。「私たちが、社会に対して感動を与えるパートナーになるには、自らの仕事に価値を生まなくてはいけない。さらには自らの仕事に誇りを持たなくてはいけない。『VALUE and PRIDE』こそが今の菱洋エレクトロに必要だ」と力説する。Only RYOYOという新たな価値により社員が誇れる会社を創る。中村社長の決意に揺らぎはない。
プロフィール
中村守孝
(なかむら もりたか)
1959年、東京生まれ。84年、伊勢丹に入社。2011年、三越伊勢丹取締役執行役員経営企画部長、12年、三越伊勢丹ホールディングス執行役員人事部長、16年、常務執行役員情報戦略本部長。17年に特別顧問として菱洋エレクトロに入社。専務執行役員などを経て、18年4月26日付で代表取締役社長に就任。
会社紹介
1961年、菱洋電機として設立。85年に社名を菱洋エレクトロに。インテルやエヌビディアをはじめとするさまざまなメーカーから半導体やICTデバイスを仕入れて販売するほか、近年はITソリューションを提供している。