PC市場と日本を盛り上げていく
――PC市場向け戦略を教えてください。
国内のPC市場は今、法人向けが上向き、コンシューマーが横ばいで推移しています。ICT投資の第一歩としてPCの買い替えに取り組む企業が多く、こうした企業の旺盛な投資意欲が法人向けPC市場に反映されています。また、教育向けPCも伸びています。政府の方針に従った教育改革により、キーボードのあるPCの普及が進んでいるからです。
横ばいのコンシューマー向けPC市場では、ゲーミングPC、クリエーター向けPCを意識した製品づくり、普及活動を進めています。ゲーミングPCを盛り上げる要素となるのが、eスポーツでしょう。インテルはeスポーツの大会を主催していますし、ゲーミングPC向け製品の開発・技術投資も積極的です。
――国内のPC市場は以前と比べて元気がなくなったという印象です。ソニーでVAIO事業を担当していた鈴木社長は、どのように感じますか。
インテルとしては、PC業界全体を盛り上げるために、マイクロソフトとの連携を意識して動いています。また、ディストリビューターやリセラーとのコミュニケーションを密にしています。彼らとのコミュニケーションをしっかり取り、PC市場を盛り上げていけば、PC業界はおのずと成長していくと考えています。
PC市場が盛り上がれば、日本のPCベンダーは特徴のある商品を出せるようになります。そうした日本らしいPCが、継続的に投入されるようになるのを期待しています。
まずはPC市場が伸びていくための土台を作ることです。それができればPC産業に携わる人々がいい商品を作り、それによりまたPC市場が伸びていくでしょう。いいPCが生まれれば、それに合わせてソフトウェアやコンテンツが誕生します。この循環が成立すれば、PC市場だけでなく、日本の産業にもいい影響を与えるでしょう。そのきっかけを当社でつくりたいと考えています。
Favorite Goods
海外ブランドの電気シェーバーを長年使っていたが、ひょんなきっかけで日立製シェーバーを購入。音が軽く、深剃りがしっかりできるうえに肌にやさしい。優れたロータリー技術を実感した。日本のテクノロジーの良さをつくづくと感じたという。(海)
眼光紙背 ~取材を終えて~
知的好奇心こそが経営者に必要な素養
市場の変化が激しい現代において、経営者に求められる素養は何か。鈴木社長は「知的好奇心」だと断言する。
「新しい世界を生み出し、産業を創ってきた人たちは、総じて知的好奇心が旺盛だった。インテルの創業者・アンディ・グローブが、子どものような探求心を持つ人だったと聞いたときも、やはりそうかと思った」という。そうとくれば、鈴木社長も同じ知的好奇心の持ち主かと思いがちだが、本人の評価は「好奇心が薄い」とのこと。
それに気付いたのは、高校生の頃だったという。常に新しいものに興味を持ち、探求し、すぐ行動を起こす友人に圧倒された。「多くのものに興味が持てることがうらやましい」と思ったほど。それから好奇心を磨こうと努め、会社役員になっても、その意識は変わっていない。
羨望のまなざしで見ていた好奇心の強い友人は、大手企業の社長として変革に取り組んでいる。時々酒を酌み交わす間柄だ。「彼やアンディのレベルには届いていないが、昔と比べればいろんなことに興味が持てるようになった」と鈴木社長。その知的好奇心を惹きつけたのが、インテルが仕掛ける新たな事業だ。
プロフィール
鈴木国正
(すずき くにまさ)
1960年8月、神奈川県横浜市生まれ。横浜国立大学 経済学部を卒業。84年にソニーに入社する。94年にはソニーアルゼンチンの社長に就任し、99年にVAIO事業本部 Global VAIO Direct(GVD)プレジデントに、2006年に同事業本部の副本部長に就任。07年にコンスーマープロダクツ グループ商品事業戦略室 室長、08年にソニー・エレクトロニクス・インクのEVP、09年に業務執行役員VAIO事業本部 本部長兼ソニー・コンピューターエンタテインメントの副社長、12年にソニーモバイルコミュニケーションズの社長兼CEO、14年にソニーの執行役員兼ソニーエンタテインメントのEVP、18年にソニー生命保険の理事に就任。同年11月にインテルに入社し、代表取締役社長に就任する。
会社紹介
1968年、半導体技術者のロバート・ノイスとゴードン・ムーアによって設立された米インテル コーポレーション。創業当初は半導体メモリー、続いてマイクロプロセッサーを主力商品とし、現在は世界のCPU市場で圧倒的なシェアを誇る。2018年度第4四半期の売上高は前年同期比9%増の187億ドル、非GAAPの1株あたり利益は1.28ドルだった。通年売上高に関しては全ての事業グループで過去最高となった。日本法人は76年設立。