国内でサーバーやストレージなどエンタープライズ事業を展開するレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(LES)は、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するため、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたソリューションビジネスに注力している。デルでハードウェア、マイクロソフトでパブリッククラウドの知見を蓄えた新社長のジョン・ロボトム氏は、どの方向に会社を導いていくのか。
オンプレとクラウドの知見をもつ
――大学を卒業して、まず、地元オーストラリアで就職されたと聞きました。どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか。
私はオーストラリアで育ち、大学もオーストラリアで進学しました。大学では、法学と科学を専攻し、実は弁護士になろうと思っていたのです。でも、ITが好きで、そのキャリアを積み上げていきたいと思い、プログラマーとしてキャリアの第一歩を踏み出しました。その後、お客様と接するサービスデリバリーや、アプリケーションの開発、インフラストラクチャー関連にも携わりました。お客様もベンダーから金融までと幅広く見てきたと自負しています。
――来日のきっかけを教えてください。
私の母は日本人ですし、妻も日本人です。いつか日本に住んでみたい、日本でビジネスの経験を積んでみたいと思っていました。04年に日本に来るきっかけがあり、日本で暮らし始めたらとても住みやすく、好きになったんです。もう日本に来て15年が経ちましたね。
――日本でのキャリアの中で、デル、マイクロソフトでの経歴が長いですね。ここでの経験はLESで、どのように生かせそうですか。
これまでIT業界ではオンプレミスでシステムを構築してきましたが、オンプレミスに加えパブリッククラウドを活用していく時代になっています。デルでオンプレミスに関する知見を蓄え、マイクロソフトではパブリッククラウドに関するノウハウを積み上げてきました。
――LESはハイブリッドクラウドを前提とした提案に注力されていますね。
そうですね、LESを通すことで、私がこれまで積み上げた知見を日本のお客様に届けることができると考えました。LESに入社した理由はあと二つあります。一つは「人」です。いい仕事をするには、チームワークが重要です。チームワークがうまく行かないといい結果はでません。入社前、レノボ本社の人たちと話をする中で、コミュニケーションを取りやすい人がたくさんいると感じました。仕事面だけではなく、人間的にもいろいろな話ができる、そういう文化がレノボにあることを知りました。こうした人たちといい仕事ができ、いい結果が残せると思いました。
もう一つが事業のヘッドとして責任を持って取り組める点です。メンバーの中にはデル時代、一緒に働いた人がいますし、上司も知り合いです。コミュニケーションが取りやすく、ミッションに集中して取り組めると感じました。
足りないのは顧客リサーチ
――日本市場をどのように見ていますか。それを踏まえ、国内戦略を教えてください。
グローバルと比べると、日本企業のDXはまだ遅れていますが、伸びしろがあります。それを日本のお客様に届けることができます。
レノボ本社では、これまでのプロダクトカンパニーからお客様中心のソリューションカンパニーへと進む、と方向性を定めました。レノボの強みであるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、ハイパーコンバージドインフラ(HIC)など強い分野とAIなどを組み合わせながらソリューションを作っていこうとしています。日本市場も同様で、このことは本社トップのヤン・ヤンチンCEOやデータセンターグループ担当のカーク・スコーゲン・プレジデントからも求められています。とはいえ、レノボの資産だけでソリューションを組み立てることはできませんので、パートナーと連携しながら進めていく必要があります。
――今、最も注力している分野は何でしょうか。
HPCの領域です。2020年までにグローバルのHPC市場でシェアNo.1になることを目標に取り組んできて、18年に、その目標を達成することができました。しかし、国内ではまだNo.1にはなっていません。グローバルでの実績を生かしてHPCの提案、販売に注力していきます。
HPCの採用先というと、これまでは大学や研究所など、高度な分析を行う専門機関が中心でした。ですが、これからは市場の裾野が広がっていきます。IoTで集めたビッグデータをAIで分析し、インテリジェンスを引き出すために、高度なコンピューティング性能が求められるようになります。その時にHPCが必要になります。日本でもこれからHPCのニーズが高まっていきますので、レノボのHPCの良さをより知ってもらいたいと考えています。
――HPCを拡販するための戦略を教えてください。
ソリューションを提供するためには、お客様にフォーカスする必要があります。お客様を知り、理解することが大事だと考えています。ですが、国内ではこの部分がまだ十分ではないと感じています。まずは、ハイタッチセールスを強化していきます。また、営業職だけではなく、全社員が営業であるという意識を持ち、お客様を理解していくことが重要だと思います。
データセンターのモダナイゼーションは、ハードウェアを入れ替えるだけでは実現できません。データをどこに置くのか、クラウドに置くのか、お客様のポリシーによりクラウドにデータを置けない場合、どうするのか。テクノロジー的な課題だけではなく、お客様がどう取り組みたいのか、どういう動きをしていきたいのか、お客様と話していくことが重要です。その上で最も信頼されるデータセンターカンパニーになりたいと考えています。
お客様のニーズを理解し、プラットフォームやソリューションを提案、提供していき、そのフィードバックを販売パートナーと共有し、横展開していきます。
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