日本と北米は重要な二大海外市場
――ユーザーは、マーケットプレイスから必要なアプリケーションやサービス選び、それをブループリズムのRPAと組み合わせることで、非定型のかなり高度な業務処理まで自動化できると。
そうです。すでにAIエンジン系、情報共有系、OCR(文字読み取り)系など100種類を超える品揃えになっています。外部サービスと連携しても、IT統制やセキュリティに隙ができないよう、当社がしっかりと管理します。外部サービスと連携することで、企業システムが無秩序になってしまっては元も子もありませんからね。安心して使える外部サービスだけに厳選している点も、ユーザー企業から評価していただいています。
今後は日本のビジネスパートナーが開発したソフトやサービスと、もっと多くの場面で連携できるよう、品揃えを増やしていきたいですね。
――日本市場をどう見ておられますか。
当社にとっての海外ビジネスは、日本と北米は二大重要市場で、アジア太平洋地域では日本を最も重視しています。北米では保険会社や電力会社などから、数百件規模の業務の自動化を受注するなど大型案件の獲得が続いており、海外ビジネスは順調に伸びています。日本法人は17年夏ごろから本格的な活動をスタート。この6月1日付で、日本オラクルなどで活躍してきた長谷さん(長谷太志氏)の日本法人社長の就任をきっかけに、日本のビジネスパートナーとの関係をより強くしていきます。
日本のRPA活用は、全般的にまだ定型業務の自動化が主流です。AIエンジンなどと連携して非定型業務の領域まで自動化する動きは、これから本格化していくと見ています。もともと日本の製造業は工場のFA化に熱心で、サービス業は生産性向上に取り組んでいる最中です。国全体で見れば就労人口の減少という切実な課題も抱えていると聞きます。デスクトップ上の単純作業を肩代わりするだけのRPAではなく、数百台、数千台のロボットがインテリジェントで統制の取れた働きをするRPAニーズは非常に高いと手応えを感じています。
当社が力を入れている「コネクティッドRPA」では、より多くの外部サービスとの連携を重視しており、すでにサービス連携や販売・構築を担っていただく有力SIerとの協業も急ピッチで進んでいます。日本でのビジネスの伸びは大いに期待できるとともに、日本のユーザー企業が抱えている課題を解決し、生産性を高めることによるビジネスの成長に役立てると確信しています。

Favorite Goods
世界中を飛び回るバスゲートCEOのお気に入りは、ワイン評価アプリの「Vivino(ヴィヴィーノ)」。現地で手に入れたワインのラベルをスマホで写すと、「ワイン愛好家コミュニティーからの評価を参照できる優れもの」と話す。
眼光紙背 ~取材を終えて~
情報システムで大切なのはハーモナイズ
情報システムは、ビジネスの変化にすばやく適応する俊敏さが、経営層や事業部門から求められると同時に、IT統制や情報セキュリティを担う情報システム部門の要求にも応えなければならない。バスゲートCEOは、「経営層や事業部門、情シスの要望をハーモナイズ(調和)させることが一段と大切になる」と説く。
関係各所からのシステム改善の要望を大量に抱えて困っている情シス部門と、「うちの情シスは何もやってくれない」と不満を隠さない現場の事業部門。システム会社に勤めていたバスゲートCEOは、それぞれの部門の要望や課題を丁寧に聞き込んでいくうちに、「今のRPAの原形を思いついた」という。そして、事業として具現化するためにブループリズムを起業した。
まじめで、顧客思い。仕事人間の側面も持ちつつも、日本語版の名刺は「風呂門」と書いて、小さく「バスゲート」とルビを振るお茶目なところもある。プライベートでは、故郷の英マンチェスターの地元サッカークラブ「マンチェスター・シティ」の大ファン。日本法人の会議室にも、リーグに参加する各クラブの名前をつけているほどだ。
プロフィール
アレスター・バスゲート
(Alastair Bathgate)
1964年、英マンチェスター生まれ。英リーズ大学でMBA(経営学修士)を取得。システム会社を経て2001年、デイヴィッド・モス(現最高技術責任者CTO)氏と共同でブループリズムを創業。最高経営責任者 (CEO)に就任。
会社紹介
昨年度(2018年10月期)の連結売上高は、前年度比125%増の5500万ポンド(約75億円)と急成長している。アジア太平洋地域の売上構成比は、前年度比6ポイント増えて13%に拡大。日本市場はアジア太平洋地域で最も重要な市場と位置付ける。